サクラ大戦V妄想回顧録

夢か現か…思い入れ深く『サクラ大戦』をプレイした結果、そこでの体験がリアルなもう一つの人生経験のように感じている…そういう方々が、実はプレイヤーの中には多々いらっしゃるのではないかと思います。サクラとはそんなミラクルが生じた作品であり、わたくしもそのミラクルにあてられた一人。そんなわたくしが、かつて“太正”時代に“経験”した事を記憶が混濁したまま綴ります。今思い出しているのは1928年以降の紐育の記憶。これは新次郎であり、現代の他人であり…という、人格の混ざった記憶それ自身による、混乱した、妄想回顧録です

《「太正」 時代という “未来像” -サクラ大戦25周年に寄せて- 》

1996年9月27日。

 

それから25周年。

 

という事で、今回は特別に本ブログの通常の体裁を逸し、精神を太正から令和の側に置き、サクラ大戦という作品自体の25周年を、ささやかながら祝そうと思います。

 

ですが本作との出会いとその思い入れ等、個人的な事を語るとキリが無い為、ここはひとつ、あるいはサクラ大戦のその本質の一端を詳らかにすべく、数多ある同作の魅力の中からただ一点、サクラ大戦サクラ大戦として特別な存在になっている、その大元の理由のひとつを改めて取り上げて記すことで、記念としようかと思います。

 

ただその一点というのは、これまであまりファンの間では自覚的には言及されて来なかった部分でもあります。

 

何か。

 

それは、サクラ大戦の魅力の根幹には「蒸気革命」という「SF」がある、というその一点です。

 

一体なぜそんな当たり前のことが言及されづらいのかと言えば、それはやはり、当たり前過ぎるからです。

 

とは言えそれは、当たり前過ぎて却って盲点となっている… という訳ではなく、「太正」世界に間違いなく生きていた我々からしてみれば、そうしてわざわざ作品の前提に言及することは「メタ認知」に等しい行為である為に、ある種、野暮な事ですらある為です。

 

しかし同時にそれは、それだけその設定がサクラ大戦においては重要な前提であり、また作品世界の根幹であるからこそ、通常は背景となっているが故にわざわざ言及されない… という訳ですから、逆説的に言えば、それこそがサクラ大戦サクラ大戦たらしめる核の中の核であり、その本質の一端であると、断言出来る部分でもあるという訳です。

 

では一体、何がそれほど重要なのでしょうか。

 

それは「蒸気革命」というSF装置が “あり得たかもしれない、もうひとつの世界” を幻視する為のスペクトルそのもの、に他ならないということです。

 

ではその “あり得たかもしれない、もうひとつの世界” とは何か。それはサクラ大戦の企画を構想している段階を振り返った、広井王子氏の証言がそのまま物語っています。

 

曰く『最初は戦後の闇市をやろうとした。戦後民主主義(という美名の元に侵攻してくるグローバリゼーション)との戦いである。日本人が最後に日本の心をかけて戦った、それこそが “サクラ大戦”(意訳)』であると。

 

つまり広井氏は、サクラ大戦という企画によって “戦後もアメリカ式資本主義に取り込まれる事なく、戦前の文化と精神性とを失わずに済んだ、あるいはあり得たかもしれない、もしもの歴史を辿った日本の姿” を、幻視しようとした訳です。

 

それは敗戦とその後の米国による統治の末、資本主義の名の下に忘れ去られてしまった日本の価値観を復活させようとする試みでした。しかし…

 

そこにはある問題がありました。初期構想のままに、そのまま戦後の混沌を描き出す場合、当然、現実に起こった悲劇を前提にする必要がある、という事です。

 

それは昏く重たい道です。戦後を舞台にしてしまうのでは、明るいエンターテインメントにはなり得ない。そこで、今一度光の方へと跳躍するために必要となったのが、「蒸気革命」というアイディアだったのです。

 

「蒸気革命」…つまりは、現実の歴史とは少し違った歴史を歩んだ「もしも」の日本の姿。

 

このひと捻りを世界設定に取り入れ、さらには大正時代に舞台を設定することで、最早現実に起こった大いなる悲劇を前提にする必要がなくなったのです。

 

つまりは “戦後訪れたアメリカ式価値観との闘争” というテーマの本質はそのままに、しかし舞台をそこから転換する事で、“そもそもアメリカ式価値観に侵略されずにそのまま発展していたならば、もしかしたらこうだったかもしれない日本の姿” へと、幻視する先の世界が変わった訳です。

 

このひと捻りが、いかに価値のある事か、お分かり頂けるでしょうか。

 

人間の認知とは複雑なもので、例えそれが創作物であったとしても、実際に目にしたものは、深いショックとともに、身に刻み込んでしまいます。それはつまり、事実の追認、ということでもあり、そういうことも起こり得るという、認識の強化でもある、とも言えます。

 

そしてまた同時に人間の無意識というものも、素晴らしくも恐ろしいもので、こんなことが起こっては嫌だ、という不安心理こそが、実際の悲劇を呼び込む呼び水になることもある訳です。

 

無論、だからと言って、見ざる聞かざるで良い訳ではありません。あらゆる悲劇を繰り返さないために警鐘を鳴らし続けることは、必要不可欠なことです。

 

けれども、それだけでは、やはり足りないのです。絶対的に足りない。それだけでは、限界がある。なぜなら、悲劇のビジョンがあるだけでは、喪失は、喪失のままだからです。

 

それだけでは、実際に起きた悲劇と喪失は、慰められこそすれ、癒されはしないから、です。

 

ならば、果たして、どんな手があるというのでしょうか。

 

その答えこそが「蒸気革命」が起きた「太正」時代、のような発明なのです。それは即ち、世に数多あるジャンルフィクションが本来的に持つ夢想の力、想像の力のことでもあります。

 

SF、そしてファンタジーの力を使えば、その想像力で、現実に起こった悲劇を飛び越えていけるのです。

 

サクラ大戦は、ただの歴史ものではありません。もしそうであるならば、大正浪漫と歴史的事実と時代考証のみが魅力であるならば、何もスチームパンクを取り入れたものでなくても、実際の大正時代を舞台にした作品であれば、サクラ大戦ならずとも何でも良いはずです。ですが、そうではない。

 

例えばサクラ大戦本編のオープニングをアニメーションと共に威風堂々颯爽と飾る、田中公平氏作曲の『メインテーマ』。

 

その曲調を一聴すれば分かる通り、サクラの “太正” 世界とは、実はレトロ感、懐かしさ、ではなく、むしろ、新時代感、フレッシュさ、それらの方が高らかに宣言され、世界観の色合いとしての肝となっている訳です。

 

そしてそれは即ち、実は過去を振り返るという視点ではなく “もしかすればあり得たかもしれない、あり得るかもしれない、もうひとつの理想的な世界” の黎明を宣言する、つまりはその世界が向かう未来への可能性を描き出す音色だったのです。

 

それでは、サクラが描き出す理想的な世界とは、具体的にはどのようなものなのでしょう。

 

OVA『桜華絢爛』で非常に印象的なシーンがあります。

 

それは浅草仲見世通りのおいちゃんたちが昼間から縁側で将棋を差しているシーンで、翔鯨丸が緊急出撃する為に、急いで店を畳まねばならなくなる、というくだりです。サンダーバード2号式に仲見世通りの下に格納されている翔鯨丸が出撃する際には、迷惑な事この上ない事に仲見世通りが丸ごと展開する必要があり、しかし彼らも手慣れたものでバタバタと店が畳まれていき、勝負は翔鯨ぇ丸にお預けだ、となり、特に迷惑そうにするでもなく、それどころか楽しそうにがんばれよ〜と翔鯨丸に呑気に手を振る、あの感じ。

 

戦後多くの日本人は忘れてしまった、あの感じ。

 

あの空気感に凝縮されている何かを復刻させようと試みているのがサクラ大戦である訳です。

 

と、こうして舞台設定についての話が続きますと、やや大仰な話であるように思われるかもしれませんが、しかしこれは、サクラ大戦本編が、気の利いた、あるいは馬鹿馬鹿しいユーモアに満ちた、笑いに満ちた作品であるということとも、無関係ではありません。

 

それどころか、その笑いは真に向日性があるが故のものであるという、つまりは作品の本質そのものだということの証左でもあるのです。

 

例えば、恐らくですが、多くの人はサクラ大戦の主題歌であるゲキテイこと『檄!帝国華撃団』を初めて耳にした時、恐らくどこか “恥ずかしい” 感覚がしたのではないか、と思います。

 

心熱く胸躍り血潮が滾る堂々たるメロディーと歌詞でありながら、しかしだからこそ、どこか恥ずかしかった、のはなぜか。

 

それはサクラ大戦が描く物が、いわゆる王道中の王道である為です。

 

あるいは無意識の内に態度を斜に構えざるを得なくなるような、厭世観に満ちた深淵ばかりを覗き込む世の創作物の中で、脇目も振らず一直線に一際輝く大いなる正道の祭典。

 

その直球ど真ん中の、純粋極まるポジティブなメッセージ故に、世に馴染もうとする余り、大人になろうとする余りいつの間にか擦れた概念を吸収しすぎた、現代に生きて来た我々の世界観は、衝撃と共に揺さぶられる訳です。

 

「もしもこうだったら、この方がいいじゃん」というポジティブなメッセージ。

 

あるいはあり得るかもしれない未来像としてのサクラ大戦のその力強い価値観は、これからも有効であり続けるはずです。

 

それも、国内だけでなく、世界に対して。

 

(…以下、当ブログらしく、この件に関して少しだけ米国事情の側からの話をします。あるいはここで一旦筆を置けば比較的綺麗な祝辞になるのですが、せっかくの機会ですので、もうあと一歩、闇の側に足を踏み入れ、だからこそサクラ大戦の中に潜む価値観は世界に対して有効であり、光をもたらす為に今こそ必要とされるべき作品である、ということの理由を、もう少しだけ提示したいと思います。)

 

例えば、カレン・アームストロング氏が著書『イスラームの歴史』他で、再三厳しく指摘しているように、多くの人が宗教問題であると誤解している、イスラーム世界とアメリカとの間で今尚続く現代戦もまた、実際には上のサクラ大戦的闘争と全く同様の文脈の上にあると見通す視点こそが、まずは非常に重要です。

 

つまりその諸問題の全ては、米国式資本主義が標榜し、彼らが世界に対して一方的に押し付けて来た『 “現代” という物質的社会システムそのものへの、異議申し立て』なのです。

 

では、物質的社会システム=資本主義の弱点とは何なのでしょうか。

 

…唐突ですが、皆様はマイクマイヤーズ氏主演監督映画『オースティンパワーズ』の主人公オースティンの“歯並びが悪い”というギャグをご存知でしょうか。『オースティンパワーズ』は007のパロディ映画であり、主人公のオースティンは英国人のエージェントです。彼は007流のモテモテセクシーガイを気取っていて実際その通りなのですが、“歯並びだけは無茶苦茶悪い”のです。

 

何かというと、これは米国人が持つステレオタイプな偏見のひとつである「英国人は歯並びが悪い」というイメージのカリカチュアである訳です。

 

一体なぜそんなイメージが出来上がったのかというと、元は「英国は我々米国と違って格差があって平等じゃないから、下層階級の人間は歯列矯正が出来なくて歯並びが悪いのだ」という風聞から生まれたものでした。しかしその風聞がひとり歩きした結果、最早その由来の方が忘れ去られ、ただ「英国人は歯並びが悪い」というイメージが広がってしまった訳です。

 

ここで驚くべきは無論「英国は我々米国と違って格差があって平等じゃないから」という部分です。皆様もよくご承知の通り、米国こそは今経済的格差が深刻に広がっている国です。無論英国は実際に今に至るも厳しい階級差別社会ですが、米国もまた別の形で格差を生んでいます。ですが、建前としては自由と平等を謳っている。

 

しかし資本主義とは、結局は「資本家」と「労働者」を分けるシステムでもありました。例えば、かつて1920〜30年代の米国では、ロコモーティブに車にと、流線型のデザインがもてはやされ、さらには「快食快便ヨーデルレイヒー」ことスムーズで効率的な健康食「シリアル」が国を挙げて推奨されて来ました。(なぜあんな不健康そうな食べ物が米国では定番なのかと言うと、以上の理由に依ります)

 

それは取りも直さず、国を “スムーズ” に流線型にし、労働力の効率化、工業化を果たし、国力を物質的に発展させるべく行われた国民運動であった訳です。

 

しかしそれは、国民(資本家以外)を国というシステムの為の部品にする政策でもありました。

 

今、まさにアメリカ自身がその『国民を部品にする “現代” という物質的社会システム』の反動に喘いでいます。

 

経済を回し、物を増やし、人口を増やし、社会が物質的発展をする事を前提としたシステム。

 

それはつまり、労働者による長時間労働さえもがシステムの一環になった世界です。

 

資本主義とは詰まるところ、産業革命後の物質レベルに応じて現れた初期の実験的システムであり、決して万能のシステムなどではあり得なかった訳ですが、その点が反省されるには、物質文明の隆盛を極めた80年代を経て尚、ここまでの時間が掛かった。

 

ミニマリズム」という運動があります。数年前からその機運が米国内で高まっていますが、これは実は “物を捨てる” という事が目的の運動ではありません。(日本国内においてはこの点が大きく誤解されています)

 

必死に働いてものを買う、そうすれば経済が回る、そうすれば幸せになれる、という自動思考を、心の本質をないがしろにしたままに作り上げてしまった、資本主義への反省と疑い。溢れかえる物で、長時間労働で、経済で飽和して、深く傷ついてしまった心を救うためのあれは、必死の取り組みである訳です。

 

そしてそのミニマリズムの文脈の上に、日本国内では「断捨離」と呼ばれている運動を、今米国が学ぼうとさえしています。

 

国内の断捨離を推進している方々の中には、それをただの部屋の片付けとしか認識していないような向きもあり、断捨離というワードを商標登録したなどという話は、笑い話にもならないお笑い種ではありましたが、例えば代表的なところでは、Netflixで米国向けの番組を持ち「コンマリメソッド」を広く紹介されている近藤麻理恵氏の活動などがあります。

 

いずれにせよそれは、物質を手放し、不要な労働を手放し、資本主義が本質的に要請する際限ない拡大志向に無意識の内に毒され続けて来た精神を救うべく学ばれている方法のひとつなのです。

 

しかし一度作り上げられた社会の強制力とは強力なものであり、組織というものもまた同様の性質を持っています。

 

『最初は人のための組織だったはずが、組織というものは、ほんの少しでも気を抜くと、すぐに組織のために人を使うようになる』とは、これも広井王子氏の言葉であり、鮮烈な指摘です。

 

増えすぎただけで実際には文化的に何の意味もない、経済を回すためだけの会社組織がごまんと存在しているのに、そのために人々が過酷な労働を強いられており、さらに組織は組織そのものを守るために、人々により薄給で長時間労働を強いるという現況があります。

 

果たしてそれで良いのでしょうか。良いはずはありません。それでは、そのような物質主義的資本主義に対して、社会主義という極端な形でなく別の道を提示し得る国がもしもあり得たとするのならば、それはどういった国から発されるものでしょうか。

 

それこそは、日本が培って来た(しかし戦後失った)精神性に他なりません。

 

…とは言え、ちなみにですが、私自身は常から米国文化と英国文化を愛していますし、今現在の専門は中東文化です。ですので日本という国に対しては、ごく単純かつ素朴な、いわゆるパトリオット的な愛着と深い感謝はあれども、ナショナリズム的な思い入れは一切ありません。ですが、だからこそ、歴史を俯瞰して見つめるのならば、ある精神性を世界に対して提示し得るのは日本であるはずであったと、そう思います。

 

例えばかつて、成熟した江戸期には、少しの労働で数日間は十分に遊べるだけの額が手に入り、人々が「余暇」を十全に楽しみ、ために知的水準も大きく上がり、文化的に豊かに暮らしていたという状況がありました。

 

産業革命前の物質レベルに於いてであるとは言え、実際にそれは成り立っていたのですから、長時間労働をしなければ生きていけるだけの食物と金額が手に入らない、という世界は、多くの人々の思い込みと、既得権益の力学によって保持されているだけです。

 

きちんと大人が芝居を観に行き、昼間から映画を観に行き、友と家族と多くの時間を過ごし、旅をし、本を読み、食を楽しみ、十分に有り余る時間で人生を謳歌する、経済一辺倒型資本主義という形でなくとも、十全に社会は回るという形を世界に示す、それこそが日本の重要な役割であるはずでした。

 

例えば、杉浦日向子氏が解説されていたように、江戸の職人の美学とは、なるだけじっくりと時間をかける、というものでした。一日で出来る仕事は三日でやるのが良い。七日掛ければより上等であると。簡単なことでも簡単に済ませず、丁寧にじっくりと時間を掛けるのが良いとされたこの姿勢はしかし、今現在の資本主義社会が要請するものとは対極に位置する価値観であると言えます。

 

翻って広井王子氏の姿勢はと言えば、かつて仲間と共に立ち上げたデザイン会社で子供向けお菓子のおまけ企画を担当する事になった際、西洋ファンタジーをやるからと言って「ならラテン語を勉強するしかない」と、本当にラテン語の勉強から始め、天外魔境の時は日本のルーツを探るとしてゾロアスター教を文脈に持ち込み詳細な全国マップを作り込み、サクラ大戦の時は帝都の全地図を用意し、ひとつひとつの建物を逐一検証し、ここに何があった、どこに何があった、とやっていたら時間をかけ過ぎだと怒られた…

 

という話はご本人は笑い話としていましたし、実際、この資本主義経済圏で商品として作り上げる技術のあった人々の力を借りねば、例えばサクラ大戦などはとても完成し得たものではなかったでしょうけれども、しかし彼氏は実際に、豊かな知的興趣の世界に遊び、高度な知的水準にあった江戸の街人や職人の精神性を引き継ぎ、伊達や酔狂ではなく、彼らの姿と在り方を真に継承し、その身で体現して来た人物であったのです。

 

しかしここで真に疑問に思うべきは、そもそも「なぜ経済を回し続けねば途端に立ち行かなくなってしまう社会になっているのか」という、システムの在り方についてです。

 

富の再生産が容易になったはずの、それこそが革命であったはずの産業革命後の世界において、なぜいつまでも長時間労働が常態化しているのか。増えれば増える程に執着を増し、精神を疲労させるばかりの不要な物質を増やし続けて、一体次はどこに侵攻するつもりなのか。その根本的疑問に、現今の流行病によって初めて本物の経済縮小を経験したアメリカ自身が今一番に喘いでいます。

 

米国内で長年根強い人気を誇るSFテレビ番組『スター・トレック』は未来世界の話ですが、彼らは現代のアメリカにタイムスリップして来た際、“何と野蛮な”というニュアンスが多分に込められた言い方で、こうリアクションします。

 

貨幣経済か…!」と。「格差」や「貧困」といった問題はあくまで社会問題であるのだから解決可能のものであるとして、スター・トレックの未来世界では既にそれらの諸問題が解決されているのでした。

 

またスター・トレックは同時に他の理想的ビジョンも提示します。未来世界では宇宙人と共に宇宙探索をしているような世の中なのだから、人種差別などは一切無くなっているはずだ、と初代シリーズは60年代に制作されたにも関わらず、白人も有色人種も立場的な差がなく当たり前にフラットに話し合いがなされるという、画期的な価値観が提示されていました。

 

スター・トレックとは、取りも直さずアメリカの自己批評であり、スター・トレックの人気がある内は、まだギリギリアメリカも大丈夫、という、そういうシリーズであるのです。

 

未来に対して楽観的でポジティブなビジョンを、それも声高に為される主義主張ではなく、あくまでエンターテインメントの背景として提示する。そういう意味では、サクラ大戦もまたスター・トレック同様のポテンシャルを秘めた作品であると言えます。

 

帝都花組ほど国際色豊かなグループもそうはありません。広井氏は当初レニを男性であると設定しようとしていました。

 

サクラ大戦が当初から内包していた「もしもこうだったら、この方がいいじゃん」というポジティブなメッセージのその中には、差別と、格差と、自縄自縛となる拡大志向に喘ぐ米国(が主導する物質主義的資本主義)に対してさえ救いになるような価値観が、既にして含まれていたのです。

 

ジャンルフィクションの持つ想像の力は、エンターテインメントが示すビジョンは、実際に世界を変え得る可能性があります。

 

だからこそ、「太正」 時代という “未来像” は、これからも有効であり続けるのです。

 

サクラ大戦25周年おめでとうございます。そして、これからも。

 

RBR

 

※ 本エントリでは解説しきれませんでしたが、ジャンルフィクションのもつ想像力が現実の悲劇を跳躍する可能性については、当方が別で運営していたブログにもそれをテーマにしたエントリがございますので、お気が向きましたらご笑覧下さいませ。

チャドウィック・ボーズマンを讃えて / 映画以上の何かであった『ブラックパンサー』の本質とは - アメコミホリデイ

俳優チャドウィック・ボーズマン氏逝去の報を受け、翌日に勢いで書き殴ったものではありますが、それだけに本音が出ています。語っているのはいちアメコミ映画作品の事ですが、実際には広くジャンルフィクションの可能性について記しています。

 

※ また本エントリに引用した広井王子氏のインタビューはこちらでご覧頂けます。

①前説 : 『うつくしく、たのしく、おろかなり』広井王子3時間20分ロングインタビュー ~サクラ大戦に息づく、日本の歩みと広井王子の生き方~

 

 追記)つまりはサクラ大戦は決して、いわゆる懐かし系にもオワコンにも、その本質としてなり得ないという事でもあります。ですので、ここまで記せば大意は伝わると思うのですが、個人的には、まさにこれからNetflix等で世界に向けて改めて映像化すべき日本の作品は、サクラ大戦が理想的であると思っています。例えば上に挙げた翔鯨丸出撃シーンの周りの人々の様子、等という暮らしの様子の局所に、実は色濃く横溢するサクラのその本質を、『蒸気革命』というギミックに潜むサクラのその肝を外さない座組で企画する事は困難を極めるでしょうが、しかし現代的で未来派な価値観を、政治的主張としてではなく明るいエンターテインメントとして提示できるポテンシャルを、サクラ大戦という作品は大いに秘めているはずであると、そう思います。

ロマンスは想像力の始まり / イェソド(基礎)に想う / 九条昴問答⑦(最終回)

 

rbr.hatenablog.jp

 

前回からの続きです。

 

茹だる熱帯夜。上空300m。当時建築中であったエンパイアステートビルディングの頂上付近、大きく中空に張り出したその剥き出しの鉄骨の突端で、昴さんと僕との哲学的問答は続いている… 

 

はずでしたが…

 

不思議な甘い香りと共に昴さんの周りに桃色の煌めきが舞い始めたと思った刹那、気付けば、僕と昴さんは、曰く『想像界』とでもいうべき、夢の領域へと足を踏み入れていました。

 

それは霊薬『砒霜』の効果と、昴さんによる霊的導きによるものでした。

 

我々は、物質世界『マルクト(王国)』から、想像界の入り口『イェソド(基礎)』を目指し、中央の道『タウ』を進みました。

 

そして今、『イェソド(基礎)』に辿り着いたのです。

 

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目の前に、月明かりに照らされた大きな川がありました。

 

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何となく、向こう岸の気配を感じるのですが、光に溢れていて、どうにも心地よさ気です。

 

三途の川だ、という事が、本能的に理解出来ました。

 

どうやって向こう岸に渡ろうかと思案していると、ふと渡し舟が待っている事に気づきました。黒いケープを纏い、フードを目深に被った船頭らしき人物も乗っています。

 

昴さんと僕は渡し舟に乗り込みました。

 

ーー向こう岸に行くなら、渡し賃がいるよ。

 

渡し賃… ポケットを探りますが、財布などは持っていません。昴さんに助けを求めると…

 

ーーこれでいいかい?

 

と、昴さんは五芒星の描かれた『貨幣』を取り出しました。君も持っているはずだよ、と言われ、今一度ポケットを探ろうとしましたが、いつの間にか右手に何かを握り締めている事に気付きました。手を開くと、昴さんの物と同様の『貨幣』が載っていました。

 

では… と、船頭さんに渡そうとするのですが、出来ません。何か、不思議な力に邪魔されるようにして、ただただ脂汗が滲むだけで、どうしても、手の中の『貨幣』を手放せません。

 

ーー執着よの。そちらさんは往く準備が出来とらんようじゃが?

 

船頭さんはやや呆れ気味の口調でそう言いました。昴さんは、仕方ない… と何かを手の中で捏ね、すっと二枚の… ピンク色の『貨幣』を、船頭さんに差し出しました。

 

ーーおいおい、こりゃ贋金じゃないか。こんなモンだけ置いて向こう岸に行った気になっても、得るものはないぞ。

 

ーー申し訳ない。今回は下見なので、許して欲しい。

 

ーーなら、もう二枚だ。

 

昴さんは再び手を捏ね、もう二枚のピンク色の『貨幣』を渡しました。恐らくそれは、砒霜で偽造した偽の “肉体” のようでした。

 

船頭さんはその『貨幣』を受け取ると、渋々… という調子で船を漕ぎ出し、ようやく船が進み始めました。その時少しだけ船頭さんのフードがずれて顔が見えたのですが、それはやはり昴さんの顔をしていました。

 

どうして船頭の昴さんは老人のような調子で喋るのかと昴さんに尋ねてみると、曰く象徴的老人だからだろう、との事でした。

 

ーー言っただろう、全ては象徴だよ。

 

しばらくすると、ジャスミンのとても良い薫りが香って来ました。すると岸が見えて来て、そこにはなぜか、月光に照らされたリトルリップシアターが建っていました。

 

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僕たちは船を降り、シアターの中へと入っていきました。

 

ホワイエは多くの人々で賑わっていました。皆肉体を持っていないようで、少し曖昧な輪郭でしたが、皆陽気に過ごしています。ジュークボックスからはアネット・ハンショウ版『Get Out And Get Under The Moon』が流れており、とてもリラックスしたムードでした。

 

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最早驚くべき事ではありませんでしたが、そこには織田信長や彼の小姓森蘭丸ら、既に世を去った人物の姿もありました。あるいはシャーロック・ホームズやホラ吹き男爵氏、そして少年レッド等、有名な架空の人物や、架空の部分が入り交じった人々が一緒に談笑しています。

 

成る程確かに、ここは死後の世界にして、想像と夢の世界である模様でした。

 

「アラジンと魔法のランプ」のアラジンもいましたが、彼らに至っては三人が存在しています。米国人風の…恐らく「バグダッドの盗賊」で主人公を演じた時のダグラス・フェアバンクスの風貌が混じっているアラジン、以前読んだ英国版の子供向け絵本の中国人のアラジン、原典… は詳細不明なものの恐らくこの様な感じだったろうと想像されたアラブ人風のアラジンの、三人です。

 

どうやらここでは、あらゆるイメージの入り交じった、あらゆるバージョンの人物たちが存在している様でした。

 

中には「イマジネーション!」と叫ぶ小柄な桐島カンナ氏や… 何やら奇妙な、ヒーロー物…の様なポーズを決めるサニーさん等、奇妙な印象が取り入れられた華撃団関係者たちもいらっしゃいました。さらには少し雰囲気の違った自分… 恐らくこれまで、別の選択をしてきた、別の自分までもが存在しています。

 

そしてロビーの中央に設けられた台座の上には、誤解と想像の産物が、ラビアンローズならぬ「アラビアンローズ」が、沙漠の花が、真っ白な沙の上に紅々と咲いていました。

 

せっかくだから月を見に行こうか、と昴さんに誘われ、二人で屋上に上がっていきます。

 

ーー夢と虚構、そして性的幻想の領域… つまりは月光に照らされたこのイェソドこそが、想像界への真の入り口… “基礎” という訳だ。

 

屋上に出ると、そこには美しい満月が浮かんでいました。イメージである為にか、未だ完成してないはずのエンパイアステートビルディングの姿さえあり、月はその後ろで鮮明に、あるいは朧に輝いていました。

 

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ーーそれで… 教えてくれるかい? ロマンスの事を。

 

この旅路… 奇怪で摩訶不思議な、この精神の旅が始まるきっかけになったその問いを、旅の終わりに必要になると予告されたその問いかけを、昴さんは改めて繰り返されました。

 

ですが無論、真正面からそう言われても困ります。

 

しばし思案したのですが… しかし、僕にはある予感がありました。

 

ならばいっそと、ふと思い立ち、こう言ってみました。

 

“月が綺麗ですね”

 

すると昴さんは、成る程、それが? と、しばしクスクスと笑っていました。

 

ですが… 違います。と答えます。

 

違います。そうではなくて… つまり、きっかけなんです。僕は今、昴さんと、もう少しだけ仲良くなりたいと思って、勇気を出して、お話するきっかけを作ろうとしたんです、と。

 

興味深そうに見つめて来る昴さんに対し、更に、こう申し上げました。

 

今日、ここに来る前、昴さんは僕にふたつの質問をしましたけれど、最初の質問の答えよりも、実はふたつ目の質問の答えの方が、昴さんは喜んでいらっしゃいました、と。

 

ーーふたつ目の質問…?

 

そうです。昴さんは “本当に、こんな話に興味があるのかい” と、問われました。そして、それに対して僕が、もちろんです、と言った、その時…

 

と、昴さんのご表情が、少し固くなりました。心当たりを思い返しているのでしょうか…

 

しかし、怯まず続けます。

 

あの時の昴さんは、なんと言いますか、ふと、色が変わったように、感じたんです。その、色というのはつまり、雰囲気が、と言う事なんですけど。…そして、きっとあの瞬間、僕自身の雰囲気も少し変わっていたと思います。つまり、その…

 

昴さんは押し黙ったまま、お聞きになっています。もう少し! と気を入れ直し、尚も続けます。

 

つまり…  “もしかしたら、この人物になら、話が通じるかもしれない” と、そういう風に思われているような、そういう気配というか、期待を感じたんです。話… というのもそうだし、そうしたら、もしかしたら… 何より、気持ちが通じるかも、という… 

 

そこまで言うと、昴さんはむむと唸り始めました。もしかすると不愉快に思われたかもしれないとも思いましたが、もうやけっぱちだとばかりに、僕は、更に畳み掛けました。

 

僕にはあの瞬間、まるで昴さんの体温を感じられるかのようにすら、思えたんです。

 

きっとあの瞬間、昴さんは、ご自身の内側を晒すおつもりになられたんだと思います。だって、こんな… 無意識の世界まで共有するような事は、なかなか出来ませんし… だからこそ僕も、正直になろうと思いましたし、そうしても、きっと、怖くない、と思ったんです。

 

昴さんは依然沈黙したままです。が、構うものか、と続けます。

 

今すぐ、もう少しだけ近くに寄って、昴さんに、触れる事が出来れば、とさえ思いました。その… それはつまり… 怖くないですよ、って、その事を、もっと伝えられるかもしれないと思って…!

 

ひと息にそこまで捲し立てたところで、昴さんが口を開きました。

 

ーー …分かるよ。その感じは… 良く分かる。

 

緊張し過ぎたせいか、一気に捲し立てたせいか、僕はいつの間にか、肩で息をしていました。意外にも昴さんは、少しだけ動揺されているように見えました。

 

ーー僕はいつも… 怖がっていたのか。

 

昴さんの意外な反応に、僕もまた、たじろぐ事になりました。

 

ーー僕の話は、大概理解されないからね。相手の反応など気にしていないし、それでいいと、そういうものだと思っていたんだが…

 

昴さんはこちらに背を向け、月を仰ぎ見ました。

 

ーー言葉にすれば果実は消え去る… いつでもその本質は何処かへと消え行く。だから、気にしていないというのは事実だ。…だが… そうか… それでも、どこかで…

 

恐らくその精神の孤独を… 果てしない孤独を省みているのであろう昴さんの後ろ姿はいかにも儚く、まるで昴さんの輪郭だけが全ての景色から剥がされて、闇の中にひとり浮かび上がり、漂っているかのようにさえ見えました。

 

この人をこのまま、ひとりにしておいてはいけない、と思いました。今すぐ一歩を踏み出し、せめても寄り添う事が出来れば、と思ったその時…

 

何やら、するりと衣擦れの音がして…

 

ふと横を見ると、昴さんの事を抱きしめる僕の姿がありました。昴さんも気付いたようで、ふたりして目を点にしながら、恐らくはイメージしたままに現れてしまったのであろう自分たちの幻影の姿を、しばし呆気にとられて見つめることになりました。

 

ーー …あれが君の願望なのか?

 

いえ!その、あれは、体が勝手に、いや、頭が勝手に、等と、必死に弁解しようとしましたが、何故か昴さんは愉快そうにカラカラと笑っていらっしゃいました。

 

ーー仕方ないよ、ここはそういう場所だからね。恥じる事はないさ。で、この後はどうなるんだい?

 

幻影の自分たちの姿を昴さんが観察しようとし始めましたので、もう行きましょう、と強引にその場から逃げ去りました。

 

ーーいやすまない、からかう気は無かったんだ。その… 嬉しいよ。慰めようとしてくれていたんだろう?

 

ひとまず幻影が見えなくなるところまで移動すると、昴さんはそう仰ってフォローして下さいました。いえ、その… と口籠っていると、昴さんはこう仰いました。

 

ーーありがとう。少し分かったよ。…それに今日は、僕ももっと、君のことを知りたいと思った。

 

またしても真っ直ぐな瞳に見つめられてそんな事を言われたものですから、結局はまた赤面する事になりました。

 

ーーそれにしても… 成る程、“予感” というのが、それな訳だ。それこそが、ロマンス… つまりは、可能性のきざはし。…事ある毎に時制まで行き来するような思考をしていると、忘れがちなところだね…

 

どうやらロマンスの… ある面でのひとつの肝を掴んだらしい昴さんは、さらに何事か、上の次元の得心を得たご様子でした。

 

ーーしかしここは面白いな。君の内面が詳らかになってしまうぞ。そうだな… なあ君、好みのタイプはどんなだい? 男の好みでも女の好みでも、知っておきたいところだが…

 

聞かれたが最後、モワモワとイメージが周辺に形作られ始めてしまいましたので、もう終わりです!やめてください!と必死に懇願しました。

 

昴さんは珍しくも今度こそカラカラと大笑し、では、ほら、本当に抱きしめてくれ、と仰いました。

 

あのそれは… と戸惑っていると、そうではなく、必要だからそうしてくれ、との事でした。

 

ーー“お家がいちばん” …カカトを鳴らすんだよ。そろそろ帰ろう。だが、少しズルをしてここに来たから、一挙に目覚める事になる。衝撃が大きいから、注意しなければいけない。あ、ほら危ない、落ちそうになっているぞ…

 

昴さんの手がこちらに伸びて来て、僕の身体に触れた瞬間、ドンと大きな衝撃が奔り…

 

******************

 

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気づけば僕は、昴さんに抱きしめられていました。

 

慌てて離れようとしましたが、動くな、危ない、と言われ、ようやく状況を理解しました。

 

僕たち二人は、元いた鉄骨の上に帰って来ていました。

 

茹だる熱帯夜。上空300m。当時建築中であったエンパイアステートビルディングの頂上付近、大きく中空に張り出したその剥き出しの鉄骨の突端に。 

 

昴さんと僕との哲学的問答… そしてそこから始まった精神的旅路は、一旦そこで終了しました。

 

今夜、最初にこの場で問答をしていたときには、まるで死の化身か神か… という程に、昴さんが何か冷たく超常的な存在であるかのようにさえ思えましたが、そうして触れ合って感じる昴さんの体温は、当たり前ですが暖かく、とても人間的で、あの甘い薫りがするな、とただ、それだけを思っていました。

 

******************

 

今夜は疲れただろうから、少し休んでいくといい。と、そう仰る昴さんのお言葉に甘えて、その後、昴さんのご自宅と化しているミッドタウンのホテルのお部屋に、お邪魔させて頂く事になりました。

 

お茶を淹れるから少し待ってくれ、と、昴さんは奥からティーセットを取り出し、ダイニングテーブルで手ずからお茶を淹れてくださいました。てっきりそういうのは全てルームサービスで済ましていらっしゃるのかと思っていましたので、意外でしたし、それだけに有り難かったです。

 

昴さんが急須で淹れて下さったお茶は、何やら中国茶の様でした。ふわりと湯が注がれると、急須の中で茶葉が踊り始めます。そのお茶は、淹れている最中から、まるでお香を焚いたかのような良い薫りがして、もうそれだけで今日一日の疲れがすっかり癒え、消え去ってしまうかのようでした。

 

間接照明も暖かいデコ様式の美しいお部屋で、とろりと自然な甘みのあるお茶を頂いていると、まるで時間そのものが溶け出して、全身を潤す慈しみのしずくだけがそこに留まるかのようでした。一切の試練はこの世から去ったと正直に思えるような、心から安らげる時間でした。

 

すごく美味しいです。烏龍茶ですか? と問うと、昴さんは、ああ、その一種だ、と仰り、口に合うかどうかを気にして下さっていました。本当に美味しいです、薫りも良くて云々と、今一度素直な気持ちと感謝の意をお伝えすると、昴さんはただ、それなら良かったと微笑んでくださり、しばし一緒にお茶を頂きながら寛ぎました。

 

そして実は、興が乗って来たのか、その後奥からあるタロットデッキを持って来た昴さんが、今夜の出来事を踏まえたさらなる魔術的講義の予告をしてくださったんですけれども… それはまた、別のお話ということで。

 

…そんな訳で、急遽お届けした昴さんとの対話… 対戦… にも等しかったような気もしますが…w それを経ての精神世界への冒険の一端を、しばらくの間シリーズとしてお話しさせて頂きました。

 

しかし、お話した通り、今にして思えば、これは昴さんによる魔術的修行の、そのほんの入り口に過ぎませんでした。

 

マルクトからイェソドへと到達した我々が目指すべきは、その先にある更なるセフィラです。この先の修行については、また今度。

 

 

それにしても、それだけで人生観が変わってしまうかの、濃密で衝撃的な目眩く体験をした一夜でしたが、一番衝撃的だったのはその後日譚でした。

 

昴さんに頂いたお茶が大変美味しかったので、後日チャイナタウンに出掛けた際に、木箱に書いてあった銘柄をうろ覚えながらも思い出して、一生懸命探しまして。

 

ですが… どこにも売ってなかったんです。

 

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『大紅袍』という名前でした。

 

本当にどこを探しても見つからないもので、仕方なく王大人のお店に行ってお茶のことを尋ねたのですが、何がおかしいのかワハハと大笑した大人は、それはいわゆる伝説の茶葉で、そうそう手に入れられる物ではないという事を教えてくださいました。

 

…失礼ですよね…w 別に僕が探しててもいいと思いますけど…

 

しかし詳細を尋ねると、確かに… 少しだけ手が届きませんでしたね。その『大紅袍』は、買おうと思うと、そうですね… 今のお値段だと… 

 

20gで、250万円だったかな….w まあ、あの、プレミア付きの価格ではあるんですが…w

 

その内タイムマシンが出来たら「烏龍茶ですか?」などと口にしてしまったその時の僕を暗殺しに行こうと思います。

 

改めて昴さんに感謝したのは言うまでもありません。

 

いろんな意味で美味しい体験でしたね…w

 

 

九条昴問答・了》

 

 

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リアリティのダンス / マルクトからイェソドへ / 32号線を往く/ 九条昴問答⑥

 

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前回からの続きです。

 

茹だる熱帯夜。上空300m。当時建築中であったエンパイアステートビルディングの頂上付近、大きく中空に張り出したその剥き出しの鉄骨の突端で、昴さんと僕との哲学的問答は続いている… 

 

はずでしたが…

 

不思議な甘い香りと共に昴さんの周りに桃色の煌めきが舞い始めたと思った刹那、気付けば、僕と昴さんは、曰く『想像界』とでもいうべき、夢の領域へと足を踏み入れていました。

 

それは霊薬『砒霜』の効果と、昴さんによる霊的導きによるものでした。

 

そして『想像界』の “地図” を確認した我々は、物質世界『マルクト(王国)』から、想像界の入り口『イェソド(基礎)』を目指すべく、中央の道『タウ』を往く事になりました。

 

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ーーでは、気分を変えて改めて行ってみようか。ピンク色のお猿が出て来たしね。…リカのキャラクターは妙にピンクが多いな…

 

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昴さんの仰る通り、目の前にジャングルレビューのお猿が元気に飛び出して来ました。確かにリカのレビューショウのキャラクターです。お猿は無邪気に飛び跳ねると、先程の地図の上で楽しそうにケンケンパを始めました。

 

ケンケンパ、ケンケンパ…

 

先に進むにつれてお猿の輪郭はどんどんブレてゆき、最終的に光になって消えました。

 

ーーWelcome to route 32! そしてようこそ! ヨモツヒラサカへっ!

 

そこへ唐突に黄色い声が被さって来ました。しかし、昴さんのお声です。確かに昴さんのお声なのですが、それは今まで舞台上でも聞いた事がないほどに、ポップでキャンプな、少年か少女か、ともかく小さな子供のようなお声でした。

 

混乱しながらも声のした方を見上げると、帝都花組さんの歌謡ショウの衣装でしょうか… なぜかしら、西遊記沙悟浄の格好をしたもうひとりの昴さんが、ふわふわと空中を漂っていました。

 

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ーーなぜ河童なんだ。

 

他にもっと聞きたい事があるのに… とは思いましたが、とにかくも、隣にいる… オリジナル昴さんがそう問いかけます。

 

ーーアタマにお皿があるからだよ。受け入れ上手なのっ!

 

成る程な… と隣の昴さんは即座に納得してしまいましたが、それでは僕にとっては意味不明なままです。焦り説明を求めると…

 

ーーすまない。確かに説明が必要だね。あの昴はどうやら『杯』の担当らしい。つまりは『共感力』の担当だ。

 

共感力…? 杯…? 結局よく分からないワードが並べられ、ますます混乱していきます。

 

ーーところで、ねえ、そこのあなた… あなたのおかあさんって、もしかして、ちょっと気の強い人だったりする…?

 

ふと河童の昴さんにそう問いかけられ、思わず答えてしまいます。

 

ああ、うん。そうなんだ。すごく元気な人で、明るい人なんだけど、確かにちょっと気が強いところがあって…

 

ーー昴、悪いな。今回はその辺は端折る事にするよ。彼はここに来るのは初めてだし、今回は、イェソドの入り口を下見に来ただけだから。

 

ーーあ、なーんだ。じゃあ、本格的な修行はまだなの?

 

ーーそういう訳だ。悪いね。他の3人にも伝えてくれ。

 

ーー昴は言った! うん、わかった! じゃあ、その子が落っこちないように、昴も気をつけてあげてね! って。

 

河童の昴さんはそう言うと、パシャリと水しぶきを上げながら、去って行きました。

 

ーー成る程、水のエレメントの説明も兼ねている訳か。上手いものだな。

 

依然訳知り顔の昴さんに説明を求めるのを諦めると、今度は目の前に車が出現しました。ラチェットさんの乗っているような、マッシブなスーパーカーでした。

 

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ーーでは、ここからは飛ばして行こう。さっきの昴が言ったように、本来は精神の修練を経なければ、道を進む事さえ出来ないのだが…

 

え… でも、それじゃあ、その… 車で進んでしまって良いんですか?

 

ーー僕がいればね。でなければ普通は、正気を失うか、正気を失う事への拒否反応で死んでしまうが。…心配はいらない。今回は “下見” だと言っただろう?

 

全く安心出来るような説明ではありませんでしたが、ひとまず助手席に乗りこむと、昴さんはエンジンを蒸しました。

 

ーーそれに “car” の原語は “ケルト人(未知なる人)の二輪の戦車” だ。さらには “威厳” “荘厳” という意味とも関わって来た。“荘厳なる戦車” とは、大アルカナの『戦車』の事で、実は、かの王子の乗る戦車の車輪は地面にめり込んでいる。つまり、実は自分で進む必要すらなく、惑星に運んでもらうんだよ。この車のタイヤも地面にめり込んでいるだろう? surrender… 要は “身を委ね” れば良いのさ。

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上体を乗り出して確認してみると、確かにタイヤは地面に溶け込んでいました。地面の方が動いている様です。

 

昴さんは軽快に32号線を飛ばし始めました。

 

ーー本来この32号線… 黄泉比良坂を往くには、錬金術的修行が必要でね。その修行とは、錬金術の四つの魔法の武器… つまりは四つの元素、『棒』『剣』『杯』『貨幣』についてのものだ。物質的次元から想像界へと至るには、その四つの元素の習得と、理解の深化が不可欠なんだ。

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四つの元素… あの、その四つって、もしかして…

 

ーートランプカードのことを言っているのであれば、合っている。正解だ。トランプの四要素は、ネタ元であるタロットから引き継がれているからね。

 

では恐らく『棒』はクラブで、『剣』がスペード、『杯』はハートで、『貨幣』がダイヤかな… と、そこまで察する事は出来ました。

 

ーーだが、トランプ… つまりは英国のプレイングカードのことだが、あれはタロットから重要な26枚を抜いた、あくまで遊戯用のデッキなんだ。そして26という数字は即ち、ヘブライ語の神聖四字、ヨッド、へー、ヴァヴ、へー、に割り振られた数価の合計でもある。つまり26とは、主なるもの、神を表す数字でもあるから、畢竟、あれは “神不在” のデッキという事になる。

 

神不在…

 

ーー英国は様々な民族の連合国で、だから種々の民族の神話や古代の宗教観も脈々と受け継がれてはいるが、大枠としての大英帝国は、今ではすっかり唯物主義の科学至上主義に陥ってしまった。シャーロック・ホームズという存在からも分かるだろう。科学と理論を駆使すれば、世の万物を説明出来ると過誤した、あれは英国の帝国主義的思想の現れでもあるからね。

 

実は僕自身はシャーロック・ホームズの大ファンでしたが、だからこそ、やや手厳しい昴さんの仰りようも分かりました。あの頃流行ったオリエンタリズム的な嗜好や憧れとはつまり、実際には東側の国々を侵略する為の装置でもありましたし、それらは、例えば大英博物館が標榜する百科事典的博物主義が高じた結果、必然的に至った思想でもありました。

 

ーーこの世のすべてを理性によって説明出来るなんて考えは、傲慢さへの一本道だ。ろくでもないよ。だから、神不在の英国のプレイングカードに神秘性を見出すなんて事があれば、それは単なる俗物主義だし、未だ幼稚な精神の現れであるとも言える。…とは言えその反面、あるいは反動か、英国は未だにオカルト思想も根強いし、ウィリアム・ブレイクのような傑物もまた存在している。それが救いではあるがね。

 

すると沿道に、巨大な『剣』が、塔のように地面に突き刺さって立っているのが見えて来ました。

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ーーすまない。少し横道に逸れたね。やや饒舌になったのは『剣』の影響を受けたのかもしれない。『剣』が目指すのはむしろ言語を排した “空(くう)” なる精神なのだが、それに至るにはまず言語と知性を、その鋭さを “鍛え” ねばならないからね。

 

剣を鍛えるように、ですか? と、丁度ピサの斜塔程度の角度に傾斜している剣を見上げながら昴さんにそう問い返すと、まさしく、と返って来ました。

 

ーー四つの元素はそれぞれあらゆるものに対応している。錬金術では『火』『風』『水』『土』。そして風水に於いては『朱雀』『白虎』『玄武』『青龍』…といった風に。そしてそれらは、人間性を構成する諸要素の説明でもある。つまりは『魂』『精神』『共感力』『肉体』だ。

 

車は剣の横を通り過ぎて行くところでした。吹き付ける風を切る音が、上空から聞こえて来ました。

 

ーーまずは『剣』。理性、言語、精神、知性、空(くう)… もつれ合い混乱する思考、戯言を一刀両断に鮮やかに断つ剣。快刀乱麻。つまりはロゴスの象徴だ。知恵の重要性を知る必要がある、という事だ。

 

あ、では、さっきの、河童の昴さんは…

 

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ーーそう、あの昴は『杯』の要素である『共感力』を教えに来てくれていたのだろう。本来はそうして修行して、四つの要素を『自在』とする必要がある訳だ。最初に『杯』が現れたのは、そうだな… 僕が無意識に、共感を求めていたから… なのかもしれない。…四つの元素には順番があって、それぞれが昇華しながらスワスチカ… つまりは、卍、風車、あるいは曼荼羅として、回転する様になっている。だからその際は順番が重要になるが、学び始めるのはどこからでもいいからね。…つまり、僕は多分、君に共感して欲しいんだと思う。こんな突飛な試みは、いくら言葉で説明しても仕方がないからね。

 

それこそ突飛な発言で人を煙に巻くのは、昴さんのむしろ得意技ではないかとさえ思っていましたので、やや意外な言葉を聞いた気がしました。ですが思えば確かに、どれだけ唐突で予測不能な発言に思えても、昴さんはいつも、昴さんの中で筋の通る事しか仰ってはいませんでしたから、単に見えている範囲が、見えている景色が人と違うだけなんだろうな… それも、圧倒的に。と、そう改めて思いました。

 

それにしても、他にもあんな昴さんが3人いる… そう思うと、彼らに会えないのは残念だと思いましたし、その姿をひと目見る為だけにでも、今一度修行をお願いするのも悪くないかもな、と思い始めていました。

 

そんな徒然を、昴さんのお気持ちのことを想っている内に、いつの間にか沿道には寺院のように巨大な『聖杯』が現れ、過ぎ去って行きました。

 

そして更にしばらくの間道を進むと、次に現れたのは、巨大な『杖』…長い、長い、長大な棒でした。

 

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ーーそして『棒』だ。これは原初的な魂の力の証しであり、意志の象徴であり、性的な力であり、創造性そのものでもある。つまりは性的衝動や情熱というものは魂の力と同質のもので、自分の力では増やしも減らしも出来ないものであるから、それを抑圧すべきではない。だが例えば社会奉仕というのもその表れのひとつである様に、性的な力というものは、人を慈しみ、癒す力や、あるいは芸術的創造性へと完全に昇華されることもある。大切なのは、自らの身体を通して発揮される宇宙的創造力への信頼と、その方向付け、という訳だ。

 

そうした説明を聞くと、思えば特に星組の面々等は、そうした魂の力が芸術的創造性へと上手く昇華されているのかもしれない、とそう思いました。巫女にして神子… 舞台上にある彼女達の超常性は、正に彼女達自身がそのような宇宙的エネルギーの経路… 境径(さかみち)となっているからこそ、発揮されているのかもしれない、と。

 

ーー…それにしても「棒の昴」がどんな様子なのかは、自分ではあまり見たくはないな…

 

棒の昴さん… つまりは情熱的で、性的な力と創造性が爆発した昴さん、という事か… とは理解しましたが、一体それがどんなご様子なのかは、昴さんの無意識のみぞ知る、といった次第でした。…とはいえ、最初はさっぱりであったにも関わらず、徐々にジャズセッション等でもご評価の高くなっていた昴さんでしたから、もしかすると普段の昴さんと実はそうお変わりないのでは、ともこっそり思いました。口にするのはやめておきましたが。

 

長大な棒を通り過ぎながら僕が思い返していたのは、いいジャズだった、スバル、とのひと言でした。ある時点で技巧のみへの拘りを捨て、 “瞬間” の純粋なる喜びに目覚めた昴さんのジャズプレイと「ソウル」を讃えるかの、“ドッチモ”・ザ・アームストロング氏のひと言でした。

 

そうこうする内に車は道路を進んで行き、やがて眼前に、唐突に巨大な壁が聳え立ちました。

 

車を降り、行き止まりですか? と問うと…

 

ーーある意味ね。だが違う。最後の関門である事に間違いは無いがね。よく見たまえ、何だと思う?

 

そう仰りながら壁を見上げる昴さんにつられて、こちらも上を見上げると、どうやら壁は遥か上空で円を描いている模様でした。そして、その様子を見て、そこでふと気付くところがありました。

 

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壁は、実は巨大な5セント硬貨だったのです。

 

ーーその通り。『貨幣』だ。そしてこれこそ、黄泉比良坂に置かれた『千引き石』『千引きの大岩』でもある。全く同質のものだよ。

 

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千引きの大岩… そう聞けば、改めてここは黄泉比良坂なのだという事が思い出されました。彼の世と此の世の境目、境径(さかみち)…

 

ーー言っただろう、『貨幣』に相当するのは『土、地』の元素でもある、と。即ちこれは、現世(うつしよ)、物質世界の象徴、『肉体的存在』の象徴なんだ。

 

肉体、物質の象徴…

 

ーー物質、とは、存在の最底辺の “ソコ” 、底面だ。つまりは、存在の出発点、あるいは神なるものからは一番遠い場所でもある。だがしかし、物質世界とはそれら宇宙的システムの、最終的な作用の結果、果実でもあるんだ。だからこそ、物質世界もまた想像界同様に重要なものであるし、掛け替えないものでもある。…ほら、なんだか良い香りがして来たね。

 

確かに、何か、バーベキューのような、良い香りがして来ました。気付けば、硬貨の麓は多くの出店で賑わっている様子でした。多くの食べ物があり、音楽が鳴り響き、踊りも踊られていました。そこには自らの肉体性を開放するようなエンターテインメントの数々がありました。

 

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ーー何か食べていくかい? 「神経痛」カツレツに、「肩こり」鴨南蛮、「頭痛」ソーダ水もある。食べるなり飲むなりすれば、その感覚を味わうことが出来るんだよ。物質界はめくるめく濃密な世界で、すべての感覚が喜びでもあるんだ。

 

その辺のものは遠慮しておきます、とひとまず辞退しました。物質界に戻ればいくらでも味わうことが出来ますし、とも付すと、それもそうだね、と昴さんも同意します。

 

それにしても、ここ周辺の見た目は、あまりにもくっきりしていて、極彩色でした。何というか…

 

ーー美しいね。美しい景色だ。

 

僕も同じく思っていました。猥雑にして濃密にして緊密。自分が普段認識している世界は、これ程までに濃いものだったのか、と、目眩がするかの思いでした。

 

ーー精神と物質はひとつ。重要なのは、世界を変える事は容易いという事だ。自らの精神を変えれば良いのだからね。ただ、物質世界は想像界よりも濃密なせいで、変化に時間がかかる。そのズレだけは意識しておくといい。

 

硬貨の中央に開いたアーチを潜り、先へと進みます。そうして “肉体の門” を潜り抜け『貨幣』を後にすると、後ろを振り返るようにと、昴さんが仰いました。言われた通り、後ろを、来た道を振り返ると…

 

巨大な女性の裸身が空に浮かんでいました。青い光輪を纏い、四つの従者を伴って。どこかで見た光景でした。あれはまるで…

 

ーー“世界 ( ザ・ワールド ) ” だ。背後に四つの元素の象徴が見えるだろう。存在の端、存在の果て。物質界は、創造界の彼岸にあるんだよ。

 

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月光に照らされた女性はゆっくりと、蛇と戯れながら踊っている様でした。

 

ーー蛇とは螺旋。つまりあれは、DNAと想像力の… 現実性(リアリティ)のダンスだよ。

 

我々は、いよいよ想像界の最初の入り口『イェソド(基礎)』の前にまで来ていました。

 

今一度前方を顧みれば、目の前には、月明かりに照らされた大きな川が広がっており…

 

そこには、渡し舟が待っていました。

 

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《続く》(次回最終回)

 

 

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