サクラ大戦V妄想回顧録

夢か現か…思い入れ深く『サクラ大戦』をプレイした結果、そこでの体験がリアルなもう一つの人生経験のように感じている…そういう方々が、実はプレイヤーの中には多々いらっしゃるのではないかと思います。サクラとはそんなミラクルが生じた作品であり、わたくしもそのミラクルにあてられた一人。そんなわたくしが、かつて“太正”時代に“経験”した事を記憶が混濁したまま綴ります。今思い出しているのは1928年以降の紐育の記憶。これは新次郎であり、現代の他人であり…という、人格の混ざった記憶それ自身による、混乱した、妄想回顧録です

【第6話】時代の裂け目《同人ゲーム没企画『サクラ大戦 -真夏のイルミネイション-(仮)』》

 

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扉絵はAIによるものです。本編シナリオにはAIを使用していません。

 

【第6話】時代の裂け目

 

★★第6話:開始★★

 

○紅蘭の過去、回想モンタージュ開始

 

カチャカチャと機械いじりをする音とともにパッとカット表示。カチャカチャと機械いじりをする音はこの後ループ。部品を分解された懐中時計がある。それを組み上げる紅蘭の手も映り込んでいる。ピンセットで部品を扱っている。フェード(フェードアウト&フェードイン)で懐中時計が少しづつ組み上がっていく。3回ほど手を進めたところで……

 

ゴーーーー!という炎の音とともにパッとカット切り替え。炎に取り囲まれる紅蘭。辛亥革命のカット。少しの間表示して……

 

パッと元のカットに戻る。カチャカチャと機械いじりをする音。懐中時計の続き。ゆっくり2回ほど手を進めたところで……

 

再びゴーーーー!という炎の音とともにパッとカット切り替え。炎に取り囲まれる紅蘭。辛亥革命のカット。今度は先ほどよりも紅蘭がアップになっている。少しの間表示して……

 

パッと元のカットに戻る。カチャカチャと機械いじりをする音。懐中時計の続き。紅蘭の手が止まる。カチャカチャ音も止まる。少しの間表示して……

 

ゴーーーーー!という炎の音とともに、パッとカット切り替え。人物は映っておらず、一面の炎。紅蘭を呼ぶ、父の声がする。

 

策杏:紅蘭……紅蘭!!

 

一瞬の間ののち……

 

パッとカット切り替え。青空。

 

策杏:紅蘭……これは……!

香燕:あらまあ……!

 

パッとカット切り替え。組み上げた懐中時計を前に、ぽかんとする紅蘭。内股座り。両親を見上げている。カメラは紅蘭を見下ろす、策杏の視点。

 

策杏:元に戻せなくて弱ってたんだけど……(苦笑いのニュアンス)

策杏:全部、組み立て直しちゃったのかい……?

 

懐中時計のアップ。冒頭のショットとほぼ共通。今は床に置かれているため、背景のみ違う。開かれた蓋にはまだガラスがある。

 

策杏:いやはや……なんてこった。

香燕:すごいわねぇ紅蘭……

香燕:だけど女の子なのに、機械いじりが得意だなんて……

策杏:おいおい、もう二十世紀だぞ? 女だ男だという時代ではないよ。

香燕:お父様の機械好きが影響したのかしら。

策杏:それならむしろ光栄の至りだよ。

 

フェードアウトとともに、ジジっとゼンマイを巻く音。

 

策杏:私は分解の専門家だからね。

策杏:その点、どうやら……

 

パッと策杏の手の中に収まった懐中時計。チッチッチと稼働音。

 

策杏:この子の方が、機械に愛されているようだ。……私よりもね。

 

ポフっという音と共にカット切り替え。紅蘭の頭に父の手が置かれている。何気なく、そっと優しく置かれる。紅蘭、頰を少しだけ紅潮させてはにかむように笑う。嬉しいような、こそばゆいような。年少で自意識は低めのため、照れ、まではいかない。ほんの少しのこそばゆさ。

 

策杏:よくやったね……紅蘭。

香燕:うふふ……よくできました。

紅蘭:お父様……お母様……

 

一旦フェードアウト、しかしすぐに……

 

再びゴーーーー!という炎の音とともに、パッとカット表示。炎に取り囲まれる紅蘭。辛亥革命のカット。

 

ゴーーーーー!という炎の音。

 

紅蘭:お父様ーー!! お母様ーーーーー!!

 

ゴーーーーー!という炎の音とともに、紅蘭を呼ぶ、父の声。

 

策杏:紅蘭……紅蘭!!

 

頭から血を流した策杏と、涙に浮いた紅蘭。

 

策杏:これを……

 

カシャ……という音とともに、パッとカット切り替え。紅蘭の手に渡された懐中時計。まだガラスの蓋が健在。

 

パッとカット切り替え。現在の懐中時計。ガラスの蓋がなくなっている。

 

パッと切り替え。炎上後、黒焦げになったイルミくん。

 

パッと切り替え。横から紅蘭を写したショット。メガネが光って表情が見えない。

 

カチャッという懐中時計の音とともにパッと切り替え。やや横からのアングルはそのまま、紅蘭の胸辺りを写す。右手に懐中時計を握りしめ、胸に当てている。

 

紅蘭:……

 

○キュオーン。といういつもの音とともに、作戦司令室の大型キネマトロンディスプレイに表示された画像を表示する。妖怪『件(クダン)』の一般的な絵。クダンのテーマ的なおどろおどろしいBGMを再生。

 

大神:これがクダン……

稗田(ひえだ):左様。人面牛じゃの。“人”と“牛”とで“件”という訳よ。

稗田:旧くは作物の豊作凶作を予知していたらしいが……

稗田:戦争、災厄、重大事の先触れとしても現れるという。

大神:重大事……

稗田:ふと目の前に現れ出でたと思うと、何かしらの予言をする。

稗田:そして、その直後に死ぬるという。

 

キュオーン。というディスプレイオフの音とともにフェードで切り替え。

 

○作戦司令室

 

かえで:紅蘭は、この……クダンに出会ったと言っていたのよね?

大神:はい。ゲネプロの朝、牛天神にお参りに行ったときに。

大神:つまり、昨日の早朝です。

稗田:暁の時分……か、成る程、然り。

稗田:妖怪共は、時の移ろいの境目に現れるものだからの。

大神:時の境目……

稗田:彼の世と此の世が交わる時よ。

稗田:最も怪異が出没しやすい時分と言える。

かえで:問題なのは、紅蘭がクダンに、どんな予言を受けたのか、ということよ。

かえで:妖怪が絡んでいる以上、帝都防衛に関する重要な内容の可能性もある。

かえで:予言の中身は、細大漏らさず聞き出す必要があるわ。

大神:……任務の重さに関しては、紅蘭も十二分に心得ているはずです。

大神:必要があれば、自ずと話してくれると思います。

かえで:……ええ……それは……そうね。

かえで:確かに今は……紅蘭をこれ以上動揺させるのは得策ではないわね……

大神:……俺も、なんとか聞き出すようにしてみます。

かえで:……よろしくお願いします。大神司令。

 

一瞬の間ののち……

 

稗田:ぐぬ……(苦痛の表情)

かえで:稗田先生……

稗田:いや、大事ない。……流石に昨夜は骨が折れたが……

かえで:……

大神:稗田先生……その……

稗田:……心得ておる。当然のことよ。

稗田:あのように呼ばれて、理由を話さんわけにもいかん。

稗田:……血吸いの赤達磨と。

大神:……

かえで:……

 

一瞬の間ののち……

 

稗田:大神くん……儂は諸君らに、今回のような事態は、初めてだと申したな。

稗田:妖怪変化が大勢現れるという……

大神:はい。

稗田:それは本当だ。しかし……

稗田:妖怪変化を実際にこの目で見たのは、初めてではないのだ。

大神:……

稗田:是害坊(ぜがいぼう)は……儂が復活させた。

大神:……!

 

第6話 タイトル表示『第六話 時代の裂け目』。パッとタイトル表示。しばし表示して……

 

○舞台裏

 

パッとカット切り替え。ところどころに数々の裂け目…亀裂の入ったイルミくん。

 

紅蘭:……

 

ひときわ大きな裂け目。

 

紅蘭:……ここにも……

 

フェードで画像切り替え。レジオトロンの霊力匣(ばこ)の一つを紅蘭が手に持っている。

霊力匣にも大きな亀裂が入っている。

 

紅蘭:……同じ裂け目……

紅蘭:……想定以上の過負荷があった……

紅蘭:……

 

パッとカット切り替え。第5話でのクダンのアップ。

 

クダン:細心を、払え。安全弁の確認を、怠らぬ、ことだ。

 

パッと元に戻る。

 

紅蘭:安全装置は問題なかった……なんべんも確認したんや……

紅蘭:……

紅蘭:……はめられた?

紅蘭:……

紅蘭:でも……

 

フェードで切り替え。失意の中、机に置かれる霊力匣と、紅蘭の手。

 

紅蘭:どうして……

紅蘭:……

紅蘭:!

 

ガシャ……という音とともに、金のレジオトロンを表示。

 

紅蘭:異常な負荷が掛かったんは霊子回路や……

紅蘭:せやったら……

紅蘭:……

 

紅蘭:レジオトロンも同じ……!

紅蘭:……どないしたら……

 

カメラを少し右にパン(カメラ移動)。紅蘭の手の向こうに、サクラ大戦2時点での戦艦ミカサの三面図。

 

紅蘭:……

 

フェードでカット切り替え。改めて紅蘭視点で、サクラ大戦2時点での戦艦ミカサの三面図をカット表示。

 

パサっと紙を拾い上げる音。

先ほどの戦艦ミカサの三面図に署名された帝国華撃団蒸気工廠名簿。青木保治郎の名をアップで表示する。

 

紅蘭:……

紅蘭:過負荷を逃がすために必要な考え方……

紅蘭:……せや……

 

フェードアウト。

 

○事務室

 

パサっと音がしてパッと画像表示。今日の新聞。一面。『帝国歌劇団新作公演で炎上騒動』の見出し。小見出しは『蒸気機械の暴走か』

 

さくら:出ちゃいましたね……昨日の記事。覚悟はしてましたけど……

レニ:ゲネプロ失敗……炎上騒動……さすがに厳しい評ばかりだ……

レニ:蒸気機械を大きく採用してることに関しても、今回は特に厳しい見方をされている……

さくら:……紅蘭の舞台装置……本当は、凄い発明なのに……

レニ:仕方がないよ……事故が起きてしまったのは事実だ……

 

織姫:他にはなんて書いてるでーすか?

レニ:……とはいえ、帝国歌劇団において舞台の崩壊そのものは……

レニ:活動初期にはよくあったことではあるが……とも書いてある。

さくら:え……

織姫:私とレニが来る前ですね。……もしかして、さくらさんがやってたでーすか? 

さくら:ち、違いますよ……! 私じゃ……! 私……だけじゃなくて……

さくら:……あ、その……愛ゆえに……とかかな……

さくら:あ、あの頃は私、入りたてで……!

織姫:ノンノン。昔のことはどうでもいいでーすよ、さくらさん。大事なのは今でーすね。

さくら:そ、そうですよね……! 大事なのは今……!

織姫:さくらさんは今でもドジ子さんでーすね。それが問題でーす!

さくら:え! そ、そんなことないですよ……!

 

ドーン!という大きな音が遠くで響く。軽く揺れる。

 

さくら:わ……!

織姫:なんですか……!?

レニ:地下だ……!

 

フェードアウト。

 

○鍛錬室

 

今一度、ドーン!という大きな音。激突音。先ほどよりも大きく、直で響く音。

 

フェードで画像表示。画面手前で倒れたカンナ。奥に起動した鍛錬用人型蒸気。逆光。

 

カンナ:ちきしょう……!

レニ:カンナ!

さくら:カンナさん……!

カンナ:まだだ……!

レニ:無茶だカンナ! その機械は……!

レニ:人間に使えるようにはできてない!

カンナ:……っつても、鍛錬用の機械だろ。使わなきゃしょうがねえ。

カンナ:はあああああ!!

 

ドン!という音ともにカット表示。

人型蒸気の顔面に蹴り。第一話と似たようなカット。

 

さくら:いけない……反撃が!!

 

大きく仰け反る人型蒸気のカット。

 

レニ:……けど、桐島流は捨て身の空手……! まさか!

 

ドーーーーーーーン!ひたすら大きい音がして、蒸気機械の拳がカンナの腹に直撃しているカット。

 

さくら:カンナさん!!

カンナ:桐島流奥義……公相君……砕破!!

 

パッと暗転。

ドドドーーーーーーーーン!! と、音。

 

フェードインで画像表示。光武の時と同じように裏拳を構えたカンナ。しばし表示して、ドサっという、カンナが膝を着く音と共にカット切り替え。壁にめり込んだ人型蒸気。手前側にはひざを着いたカンナ。ギイイィィィ……。など、人型蒸気の軋み音。

 

カンナ:……

織姫:カンナさん!

レニ:カンナ!

 

通常画面へ戻る。

 

カンナ:へへ……ちょっとやられちまったな…… (苦しそうに)

レニ:カンナ、どうしてこんなことを……!?

カンナ:どうしても何も……あいつを倒すためだ。

さくら:……是害坊ですか……?

織姫:相手は妖怪ですね。勝負にこだわる必要ないでーす……

カンナ:……

カンナ:……ゆうべ……

さくら:……?

カンナ:……ゆうべ、あいつと戦った時……

カンナ:勝ったと思ったんだ。

さくら:……

カンナ:決めの一撃を放った瞬間に、そう思った。

カンナ:なのに、決まった瞬間には……別のことを感じたんだ。

レニ:別のこと……負けるということ?

カンナ:いや……そうじゃねえ……

カンナ:そうじゃなくて……とにかく、勝てねえ……って、感じだったんだよ……

織姫:負けるってことですか? おんなじでーす。

カンナ:いや、違えんだって……なんつったらいいのかな……

レニ:カンナ……桐島流の奥義は捨て身の技……あまりにも危険な技だ。

レニ:いくら相手の一撃を霊力で耐えても、身体には限界がある……

レニ:だけど、実際の戦闘では、僕たちも一緒にいるんだ。……連携して戦えば……

カンナ:……ありがとよ、レニ。けどよ……

カンナ:あたいは、琉球空手桐島流、二十八代目継承者だ。

カンナ:やるときゃやる。それ以外にゃねえさ。

レニ:……

さくら:カンナさん……

カンナ:桐島流は捨て身の空手……そりゃあ……その通りだ。

カンナ:だがよ……そりゃつまり、決して守りには入らねえ空手ってことだ。

カンナ:攻めて、攻めて、攻めまくる! それこそが、桐島流の真髄だ。

レニ:桐島流の……真髄……

カンナ:これだけは、いつだろうと、変わらねえ。

カンナ:親父から受け継いだこの拳だけは、揺らいじゃなんねえんだ。

 

フェードで暗転。

 

シャン……シャン……という音と共にパッとカット表示。山道を歩く坊主。稗田。稗田をクローズアップするわけではなく、山中の景色の中に紛れて小さく配置されるように。山に紛れるのが修行。

 

稗田:真言を唱え、ただただ歩き続ける……

稗田:雨の日も、風の日も、嵐の日も。

稗田:儂もかつては尋常一様な修行僧であった。

稗田:しかし元々、人知を超えた出来事に格別の興味があっての。

稗田:ふと聞き及んだ身近な伝説に、儂は心を奪われた。

稗田:……執着を覚えたととも言える。

 

ボウッ!という炎の音ともに炎ワイプでカット切り替え。比叡山延暦寺……と言いたいところだが延暦寺そのものではなく、何か山寺のお堂の中。夜間。お堂の中では蝋燭が灯されてるが、暗闇に包まれており、周辺は暗くなっていて、はっきりしない。稗田は先ほどの山中のカットとほぼ同じ位置、同じ大きさに。ただし今回は後ろから捉えたカメラのため、画面の向こう側を向いている。お堂の床に座り込んでいる。

 

稗田:是害坊の独鈷杵……

稗田:それが、いつもお堂の奥に据えられておった。

 

パッとカット切り替え。安置された是害坊の独鈷杵を大写し。現在の輝きは失われおり、くすんだ色をしている。

 

稗田:烏(からす)天狗是害坊が封じられた神器だ。

 

フェードでカット切り替え。ここから先、鎌倉時代の『是害坊絵巻』に描かれたような絵。独鈷杵の位置をそのままに、テイストが変わり、絵巻物バージョンのクラシックな是害坊の手に掴まれた独鈷杵に変わる。つかの間表示したのち……

 

パッとカメラを引く。先ほどの『是害坊の手に掴まれた独鈷杵』は実は絵の一部。パッとカメラが引くと、絵巻物が広がる。僧侶と是害坊の戦いの図。と言っても『是害坊絵巻』のように淡々としていて、激しいものではない。当時のものっぽく見えるように。

 

稗田:是害坊は……ただの妖怪ではない。

稗田:神にも等しい力を持った、大陸から渡ってきた天狗だ。

稗田:遥か昔には我ら僧侶と法力比べをしたという。

稗田:神か怪異か……天狗とはどのような存在なのか……

稗田:神降ろしが自分に出来ると奢った訳ではなかったが……

 

フェードでカット切り替え。再び当時の独鈷杵のカット。しかし今度は稗田の手が掴んでいる。独鈷杵と手がほんのり金色のオーラを放ち、発光している。

 

稗田:気づくと儂は……独鈷杵を手にしていた。

 

ボウッ!という炎の音ともに炎ワイプでカット切り替え。炎に燃えるお堂……の床、倒れこんだ燭台をアップにしたカット。倒れたろうそくから炎が燃え広がっている。ゴオオオオ……という炎の音。しばし表示したのち……

 

パッとカット切り替え。稗田の顔をアップに。のけぞるような形で若干左向き。上目遣いで、おそらく正面に立つ異形のものを見上げている。脂汗に浮いている。瞳には炎と黒い影(是害坊)が映っている。しばし表示したのち……

 

パッとカット切り替え。稗田の瞳をぐっとクローズアップ。瞳に映った炎と黒い影……影の姿は是害坊のシルエット……ここで是害坊の唸り声を再生「ヴヴヴヴヴウウウウ……」ここでは特に意味のある唸り声ではない。起きたてのあくびみたいな感じ。

 

パッとカット切り替え。宙に浮き、大きく翼を広げた是害坊のシルエット。現在の姿とは少し違う。黒を基調とした装束ではなく、緑色成分が入っている。ガルーダの色味でもあるし、本来の「風」属性の色味。ちなみに、水虎(すいこ)=青、御婢子狐(おぼこぎつね)=赤、是害坊=緑、迦具土(かぐつち)=黄土色、である。剥き身の白目を細め、凶暴な殺意を放つ、恐ろしい怪物の姿。しばし表示したのち……

 

バタバタ!という激しい足音とともに、パッとカット切り替え。他の修行僧がお堂に駆けつけている。僧侶は横一列には配置しないこと。手前のものもいれば、奥のものもいる。複数人の僧侶が驚愕の表情で是害坊を見上げている。数瞬表示したのち……

 

ギャシュ!と鋭い爪による斬撃エフェクト!と同時に暗転。

 

しばしののちに……

 

稗田:何があったのか……明確には覚えておらぬ。

 

パッとカット表示。床に倒れた僧侶の腕。脚。複数人の傷ついた腕や脚が映っている。(が、派手に血を流したりはしないこと。サクラ大戦なので、えげつないのは無し。なのだが……)床には一面、血の海が出来ている。(これぐらいはする)

 

稗田:仲間の修行僧たちの声を聞いたような気がする……

 

一瞬の間ののち……

 

ドン!!という音&激しいウィグル(画面の揺れ)とともにパッとカット切り替え。稗田に襲いかかる是害坊を横から捉えた図。右下側が稗田。思わず目を瞑り、無力にも手をかざし、身を守ろうとしている。左側……というより、左側を中心に、右下側に小さく収まった稗田に覆いかぶさるように、画面のほぼ四分の三を占めるような形で、是害坊の凶悪な姿を描写。一瞬だけ表示したのち……

 

ドシュ……というこれは稗田の持ち上げた独鈷杵が是害坊に刺さった音。と共に、その様子、稗田の手元をアップで表示。独鈷杵が是害坊に突き刺さっている。

 

カタ……という音ともにカット切り替え。独鈷杵が転がり落ち、血だまりに転がる。独鈷杵が血で穢れる。とはいえ、べったりと全面血にまみれる必要はない。難しいが、あまりえげつなくならないように。数瞬表示した後……

 

バサッ!という羽ばたき音とともにパッとカット切り替え。独鈷杵の血に濡れた箇所をつまむように持った是害坊。憎々しげに白い目で睨んでいる。是害坊の心情を反映したゴゴゴゴゴ……という不穏な音を再生する。しばらく表示した後……

 

バシュウウウウウウ!といういつものジェット羽ばたき音とともにパッとカット切り替え。稗田の視点。お堂の扉から外へ飛び出た是害坊の姿。すでに小さくなっている。数瞬表示した後……

 

パッとカット切り替え。血の海の中でやや俯き、呆然と佇む稗田。恐怖に凝り固まった表情をしている。

 

稗田:血の海の中で分かったことは、唯ひとつ……

 

パッとカット切り替え。稗田の顔に近づく。瞳に仲間たちの手足が写っている。とはいえ、まだ小さい。数瞬表示したのち……

 

パッとカット切り替え。さらに稗田の瞳に近づく。瞳に映った仲間たちの手足の様子が、はっきりわかるようになる。なお、僧侶たちは四肢をバラバラにされてしまったわけではないので、そこは注意。何人かの手足や身体が写り込んでいるということ。

 

稗田:儂はこの先どう足掻こうが……

稗田:一歩たりとて、この場を動けぬ……

稗田:その確信が全てだった。

 

フェードで暗転。

 

稗田:儂は今でも、仲間たちの血の海の中におる。

 

フェードで通常画面に戻る。

 

稗田:以来、是害坊を追い続けて来た……

稗田:しかし未だ果たせておらぬ。

稗田:つまるところ……

 

一瞬の間ののち……

 

稗田:今回の騒動の元凶は……儂なのだ。

大神:……

かえで:……それで……妖怪ハンターと……

稗田:彼奴を今一度封印するのは、儂の役目だ。

 

一瞬の間ののち……

 

大神:……是害坊の封印には、独鈷杵が必要なのですか……?

稗田:うむ……今は迦具土が手にしておる。

大神:是害坊が迦具土に従っているのは、それが理由……?

稗田:いや……独鈷杵はあくまで、是害坊を封印するためのものだ。

稗田:何故奴が迦具土に従っておるのか……それは解せぬ。

稗田:一体何が起こっておるのか……

 

カッカッカ!と駆け足の音。

 

紅蘭:大神はん! お願い! 取り次いでくれへん? 今すぐ!(興奮して、血気立っている。)

大神:どうした紅蘭……?

紅蘭:おるかもしれへんねん……! もしかしたら……!

大神:……?

紅蘭:……ウチらの救世主や。

 

○支配人室

 

大神:承知いたしました、心得ておきます。ありがとうございます、花小路伯爵。

 

ガシャ……ジャー!(蒸気音)と電話を置く音。

 

紅蘭:どうやった?

大神:それが……今は連絡はつかないらしい。

大神:数年前から政府の仕事からは離れてしまっているらしくて……

紅蘭:そうなん……

大神:けど、自宅の場所はわかったよ。それだけは教えてもらえたから……

紅蘭:せやったら……!

大神:ああ。すぐにでも行ってみよう。俺も一緒に行くよ。

紅蘭:おおきに、大神はん……!

大神:さっきの話が本当だとすると、時間もないだろうしな……

紅蘭:……なんとか解消したいねんけど……

大神:本当に、レジオトロンにも問題が出る可能性が?

紅蘭:待った無しや……博士の助言が要る。

 

フェードアウト。

 

○帝都グラフ編集部

 

フェードで編集部の様子を表示。ガヤガヤと騒々しい帝都グラフ編集部の音。ガチャガチャと電話の音などもする。羽仁もと子らが活躍した編集部。

 

記者(中年の男):マリアさん! ようこそお越しくださいました。どうぞこちらへ。

マリア:すみません、お忙しいところ……ありがとうございます。

 

ギュという、ソファに座るととともにパッと画像変更。帝都グラフ編集部の端にある応接椅子。マリア、アイリスが画面手前側に座っており、その肩越し、画面奥側に記者の姿が見える。

 

記者:いや~……マリアさんとアイリスちゃんが編集部に来てくださるなんて。

記者:今日は、いったいどのようなご用件で?

マリア:それが、先日お世話になった……

記者:あ、ちょっと、アキちゃん! アキちゃん!

 

フェードで画像切り替え。記者の後頭部越しに江戸川明子の姿。机に座った状態で、振り向いている。

 

記者:お客様に……ね。

江戸川明子:……すみません、今でないと……

記者:アキちゃん、原稿上げたとこでしょ。空けられるよね?

江戸川明子:もうすぐデモが始まる時刻なんです。

記者:まあまあ、いいから。

江戸川:……承知いたしました。(呆れた風に)

 

ガ……と椅子から立ち上がる音。

元の、記者とマリア、アイリスが対面する画像に戻す。

 

記者:あ、アイリスちゃんは、お菓子いるかな?

アイリス:いいの?

記者:もちろんもちろん! ちょっと待っててね……

記者:あの、それで、マリアさん、ご用件は?

マリア:……先日、幽霊騒動の相談の件でお世話になった方がいらっしゃるのですが……

記者:ああ、あの……! それが、前任のものは今、大阪に出向してまして……

マリア:そうでしたか……

記者:いや、しかし大丈夫です。新しい担当がいますので。

マリア:新しい担当……?

記者:ええ。そうです。いや、それがその……

 

フェードアウト

 

○小石川の石段

 

フェードイン。小石川の階段を遠景から。大神と紅蘭の姿が小さく写っている。

カツカツと階段を登る音。

 

紅蘭:はあ……はあ……

紅蘭:あかん、大神はん……ちょっと待って……

大神:あ、悪い、紅蘭。休もうか?

紅蘭:うん、ごめん、ちょっと……休憩。

紅蘭:はあ~……大神はんとかカンナはんとか……

紅蘭:体力超人と四六時中一緒におったらかなわんで……

 

ストッと、腰掛ける系のちょっとした動作音。と共にフェードで画像変更。入道雲の出ている青空を一面に。ミーンと蝉の声。

 

大神:しかし暑いな……

紅蘭:暑いなあ……

大神:……

紅蘭:あ、せや、大神はんに、ラムネご馳走してもらお。帰りがけに。

大神:はは。それならお安い御用だ。それじゃあ、帰りに一杯やるか。

紅蘭:あはは。いっとこいっとこ。くい~っとな……

 

大神:……

大神:なあ、紅蘭……

紅蘭:……大丈夫や。大神はん。

大神:……

紅蘭:手塩に掛けた新発明は爆発炎上……ゲネでは事故を起こして……

紅蘭:妖怪どもと戦う唯一の手段にも欠陥が判明した……

紅蘭:その全てに責任ある技師の気持ちとしては……

紅蘭:まあ……最高や。これ以上ないで。(自嘲気味に)

大神:……

紅蘭:……ホンマやて。ウチは一味違うねんで? 解決策はあんねんから。きっとな。

 

○帝都グラフ編集部

 

通常画面。江戸川明子は通常立ち絵を用意する。江戸川明子のバストアップ。事務的な笑顔。

 

江戸川:担当の、江戸川明子です。

記者:それじゃあ、あとはアキちゃん、お願いね。

江戸川:承知いたしました。

 

マリア、アイリスなめのカット。向かい合うソファに江戸川明子。この先、通常立ち絵を併用して進行する。

 

江戸川:前任の者から伺いました。その節はマリアさんにお世話になったそうで……

マリア:いえ……恐縮です。それで、その……

マリア:その後、似たような事件の情報はありませんでしょうか?

マリア:先日のあの一件と、似たような……

江戸川:……というと?

マリア:座敷わらし……いえ……少年の亡霊の話なのですが……

江戸川:いくつか目撃談はある様子ですわね。

江戸川:私自身は、亡霊だの妖怪だのという噂話は信じていませんが……

マリア:……

アイリス:でも帝国華撃団は、妖怪さんと戦ってるよ?

江戸川:アイリスちゃんたちじゃない方の……ね?

江戸川:そうね……みんなはそういう風に言ってるけど……

江戸川:私は、彼らが戦っているのは、やっぱり謎の怪蒸機なんじゃないかと思うわ。

マリア:怪蒸機?

江戸川:ええ。彼らは降魔でない様子ですし、例えば、以前の黒之巣会や黒鬼会のように……

江戸川:何かの秘密結社が暗躍しているのかもしれませんわ。何にせよ……

江戸川:帝国華撃団とあれだけ派手に戦闘しているのですから、亡霊や妖怪ではないでしょう。

アイリス:……(そんなことないのに……!と戸惑いの表情をマリアに)

マリア:(いいのよ、アイリス。)

江戸川:あなたたちの妖怪舞台は楽しみにしてるから、安心してね。

アイリス:あ……お姉ちゃん、やっぱり昨日の人?

江戸川:ええ。

マリア:取材においで下さった方でしたか……

マリア:先日はご迷惑をお掛けして、本当に申し訳ございませんでした。

江戸川:いえ。最近は蒸気機械の暴走が相次いでますから……むしろお気の毒ですわ。

江戸川:……事の次第は記事にさせていただきましたしね。

マリア:……恐縮です……

江戸川:私、李紅蘭さんには期待していますの。彼女こそ、新しい女たちですわ。

マリア:……

江戸川:そう思われません?

 

フェードアウト。

 

○小石川の石段

 

フェードイン。いまだ入道雲。

 

大神:……

大神:……そういえば、どういう人なんだい? ……青木博士という人は……

紅蘭:まあ、一言で言うたら、天才や。……ムッチャクチャ凄い人やな。

紅蘭:光武を設計した山崎慎之介博士の……さらに、お師匠さんみたいな人で……

紅蘭:一流の蒸機技師でもあるし、霊子力学の研究者でもある。

大神:それじゃあ……紅蘭にとっては、お師匠さんのお師匠さん……みたいな感じかい?

紅蘭:せやな。言うてみたら、そうや。

紅蘭:博士の構築するシステムは、とにかく発想が奇抜でな。

紅蘭:例えば……えーっと……

紅蘭:空中戦艦ミカサ二型改装仕様の、分離合体発進システムを構築した人や。

大神:分離合体……? というと……

紅蘭:あれや、ミカサが二回目に使われたとき。あったやろ?

紅蘭:巻き寿司みたいに輪切りになったミカサが、空中でドッキングして……

大神:ああ、あの……! 部品がバラバラに出て来た……

紅蘭:逆・ダルマ落とし方式っちゅうんかな……あれにはホンマに度肝抜かれたで。

紅蘭:何より発想が凄いし、それを実現可能にした技術力が半端やない。

紅蘭:おかげで、ミカサが出撃するときの、帝都への被害額が半分以下になったって。

大神:前は巨大な地割れが出来てたものな……

紅蘭:まあ巴里華撃団なんて、凱旋門がリボルバーに変形すんねんやろ?

紅蘭:帝都も負けてられへんからな!

大神:(……いったい何を張り合う気なんだ……)

大神:それじゃあ、青木博士はずっと政府のお抱えで仕事を……?

紅蘭:うん。ミカサ関連の仕事のことは、ずーっと気にはなっとったけど……

紅蘭:ウチがミカサの改修にお呼ばれするようになったんは最近やから……

紅蘭:そんで、ようやく事情がわかってきてん。

大神:ミカサは国家レベルの秘密兵器だからな……

紅蘭:青木博士は、ホンマ一流の蒸気技師や。それに、ただ天才なだけやない。

紅蘭:蒸気に対する、深い愛情がある。設計図を見れば、一発や。それはもう、すぐにわかる。

大神:……

紅蘭:それに、先端霊子力学の研究者でもある。

紅蘭:アインシュタイン博士が日本に来たときにも、意見交換したらしいで。

大神:霊子力学……

紅蘭:まあ……そらもちろん、ウチだけでも問題を解決できたら一番ええけど……

紅蘭:こと霊子力学は最先端の研究や。人によって、取り組み方の角度は違う。

紅蘭:どんどん意見交換をして、新たな切り口を探すべきやからな。

 

カタっと立ち上がる音。

 

紅蘭:よっしゃ……!いけるで、大神はん。

 

○帝都グラフ編集部

 

江戸川:蒸気機械の暴走といえば……最近のものは、妖怪の仕業だという話もありますわね。(語尾にほんの少し、若干、小馬鹿にしたような半笑いニュアンスが混じる。慇懃無礼に。)

マリア:妖怪?

江戸川:ええ。蒸気童と呼ばれているようですわ。子供の姿をした妖怪で……

江戸川:その蒸気童の姿を見ると、近くにあった蒸気機械が暴走するとか、爆発するだとか……

アイリス:その蒸気わらしって、男の子?

江戸川:……そうね……そういう話もあったかしら……

アイリス:マリア……!

マリア:その……蒸気童について、もう少しお聞かせ願えませんか?

 

○青木保治郎邸

 

『青木』の表札。少々朽ちている。

 

紅蘭:ここか……

大神:よし……それじゃあ、行ってみるか。

 

フェードでカット切り替え。保治郎邸前庭。

 

大神:……

紅蘭:……

 

大神:ごめんください……青木先生。

紅蘭:……

大神:ごめんくださーい!

紅蘭:……

大神:いないのかな……

紅蘭:ここに住んではるっちゅうのは、間違いないんやろ?

大神:そうだと思う……ただ、最近は政府の仕事はしていないらしいし……

大神:電話も用意がないらしいから……連絡する手段がないんだ。

紅蘭:……

大神:仕方がない……手紙を置いて置くしかないが……

 

青木:どちら様でしょう?

 

カタっと振り向く靴音。とともに画像切り替え。

 

向かって左側に大神。向かって右側に紅蘭。それぞれ入り口(納屋がある、画面奥側)の方を振り向いている。両者の真ん中に位置するあたりに、青木保治郎の立ち姿。画面こちら側によく見えるように、すらりと立つ。手にはメーデーの行進で使っていたような、デモ行進用の幟……を、旗を立てる前の状態で持っている。つまり右手に布、左手に竹竿。左手の竹竿を持っている方の腕を画面こちら側によく見えるように、少し斜に構えて立っている。こちらへの警戒も暗示しているが、表情はごくニュートラル。険しい顔ではない。

 

青木:……何か、ご用ですか?

 

紅蘭:あ、えっと……!

大神:すみません、申し遅れました。

大神:私たちは……帝国歌劇団の者です。

青木:……帝国歌劇団……? 劇場の方ですか?

大神:そうです。大帝国劇場から参りました。それで……

 

通常画面へ。

 

紅蘭:青木博士、お初でお目にかかります、李紅蘭いいます……!

青木:……李紅蘭…… 李紅蘭博士? ……キネマトロンの……

紅蘭:……そうです! その、李紅蘭です……!

青木:……

青木:……どうぞ、お上りください。

青木:……この後出掛けてしまいますので、あまり時間は取れませんが……

大神:恐縮です。ありがとうございます。

紅蘭:おおきに……あ、いや、ありがとうございます……!

 

フェード切り替え。

 

コポポとお茶の音。鉄瓶で淹れたお茶を湯呑みに注いでいる絵。

 

通常画面へ。

 

背景は応接間……のような、何なのか、不思議な空間。モチーフは幕末武士の囲炉裏。大正時代には見えない。幕末のよう。蒸気機械がないという部分を、意識的に見せたい。行灯が置いてあって、まるで幕末武士の部屋のよう。しかし、物がなく、生活感がない。

 

青木:どうぞ……

大神:ありがとうございます。頂きます。

青木:それで……どのようなご用件で?

紅蘭:……あの……これを……

 

フェードで画像切り替え。

青木保治郎の手に、冒頭に出てきた、レジオトロンの匣の一つが握られている。

 

青木:……

紅蘭:その装置は、霊子力の……

青木:霊子力伝導のための連結式回路……

青木:しかしこれは……伝導率の向上だけに特化した装置の一部……

紅蘭:……そうです……! その通りです……!

青木:それにしても……この形状は……?

紅蘭:それは、その…… 実はその装置、政府との共同開発で……

青木:なるほど……開示できない部分も多いと?

 

通常画面へ。

 

紅蘭:すんまへん……

青木:非常に優れた設計だ……フィラメント本体だけでなく……

青木:固定枠そのものが、おそらく多くの効果を同時に担っている?

紅蘭:そう……そうなんです! 霊子力の反復、収束……

青木:共振……こんな装置を開発できる方が、私などに何のご用が……?

 

紅蘭:博士の力が……必要なんです。

青木:……

紅蘭:レジオトロンと呼んでます。今帝都に出没しとる妖怪を観測するための装置で……

大神:紅蘭……!

紅蘭:霊子力学の知見が必要なんです。

青木:……

 

青木:李紅蘭博士……あなたは、大変優秀な方のようだ。

紅蘭:……いえ、そんな……

青木:先端の研究成果が活きているし、作業の丁寧さも、これを見れば、一目瞭然です。

紅蘭:……えろう、恐縮です……

青木:……

青木:……お話は、お断りいたします。

紅蘭:え……

大神:青木博士……

青木:お気付きですか? 私が今、どうして暮らしているか。

紅蘭:……

 

パッっとカット切り替え。部屋の様子。パッ……パッ……と二箇所。何もない部屋の隅、そして行灯。

 

紅蘭:……蒸気が……

青木:……そうです。この家にはただのひとつも、蒸気がない。

紅蘭:……

青木:……三日前のことです。新宿の武蔵野館で、活動映写機の事故がありました。

青木:上映中でなかったために、幸い大事には至らなかった模様ですが……

紅蘭:……

青木:二日前は浅草の劇場。こちらはレビュウの上演中に蒸気機械の暴走がありました。

青木:当然、レビュウは中断され、多くの客が混乱に巻き込まれた。

青木:そして今朝の帝都日報には、昨日の事故の様子が載っていました。大帝国劇場での。

紅蘭:……

大神:……

 

青木:李紅蘭博士、あなたは、何を思ってこの装置を作り始めたのですか?

紅蘭:……

青木:お話は、最初からお断りするつもりでいました。

青木:上がって頂いたのは、あなたのことが知りたかったからです、李紅蘭博士。

紅蘭:……

青木:ご高名は存じ上げております。大変、立派な発明をされておられる。

紅蘭:……

青木:しかしあなたは、あまりに無邪気だ。科学者として、利己的であるとすら言える。

紅蘭:利己的……?

大神:博士……

青木:あなたは、科学の責任について、どのようにお考えなのです?

紅蘭:……

青木:あるいは蒸気機械の暴走には、何か理由があるのかもしれない。

青木:私たちが持てる技術で解決できるのかもしれない。ですが……

青木:蒸気そのものが、悪しきものであったなら。

紅蘭:蒸気……そのものが……?

 

一瞬の間ののち……

 

青木:これを。

 

パラリという音ともに、フェードで画像切り替え。

紙切れ。蒸気撤廃アジビラ。

 

大神:これは……

青木:私の使命です。今となっては。

紅蘭:博士……

青木:……失礼、もう出なければ。

青木:あなたが真実に気づいてくださることを、願っています。

紅蘭:……

 

◯広場 商店街

 

『熱き血潮に』の浅草の風景を参考に、夕陽に暮れる街の様子を描写。乱歩の『白日夢』みたいな、露店が並んでいるような通り。(戦闘マップを別とすれば)第一話冒頭の引きのショット以外では、貴重な帝都の街並み描写となるので、気合入れて作成のこと。この辺は広井さんたちも苦労したところらしいので、理想の「太」正時代の街並みになるように、工夫を凝らすこと。当時の雑踏を表現できるような、うまい効果音があれば良いが、なければアブラゼミのジーという鳴き声を挿入。BGMはなし。

 

街並みのカットを表示。ワイド画像で、左から右へとカメラをゆっくりとパン。

 

パン終了後、パッとカット切り替え。ポン!プシー!!という音とともに、ラムネを開ける手元をアップで。親指でビー玉を押し込む男らしい大神さん。

 

大神:おお……っと。

 

フェードでカット切り替え。

 

並び立つ大神と紅蘭を背後から捉えたショット。右側に立つ大神は紅蘭よりも先行しており、画面こちら側に向かって、見返るようにラムネを渡してきている。藤島康介氏のイラストによくある見返り角度。忠実な藤島オマージュになるように、絶妙な首の角度で! 左側に立つ紅蘭にラムネを渡す。大神の顔は紅蘭を気遣うように微笑んでいる。紅蘭は進行方向側、画面向こう側を向いているため、表情は読み取れない。

 

大神:はい。

紅蘭:……あ……

紅蘭:おおきに、大神はん。

 

パッとカット切り替え。ラムネを胸にもち、顔を落とす紅蘭。メガネは夕陽を反射し、表情は見えない。アブラゼミのジーという鳴き声。

 

紅蘭:……

大神:ほら、せっかく上手く開けられたんだし、飲んでくれよ。

紅蘭:ウチ……

大神:?

紅蘭:……なんも言えへんかった……

紅蘭:科学者の責任について……そんなん、いつも考えてんのに……

大神:……

大神:紅蘭、青木博士のことは残念だったけど……落ち込むことはないさ。

大神:何か、出来ることを考えてみよう。

紅蘭:……ウチ……ほんまは……

紅蘭:……前にもいうたけど、正直いうて、こういう風に思うとんねん……

紅蘭:機械そのものが悪いんと、違うて。

大神:……

紅蘭:使う人間次第やねん…… 欧州大戦に人型蒸気を投入したんも人間やったら……

紅蘭:光武で街を守っとんのも、人間や……

大神:紅蘭……

 

カット切り替え。夕陽にかざされたラムネの瓶が光りを拡散する。

 

紅蘭:蒸気そのものが……悪しきものやなんて、そんな……

紅蘭:そんなん、科学者が言うことちゃうで……

 

カット切り替え。右手に持ったラムネをあおる紅蘭。紅蘭越しに、心配そうな顔をする大神さん。

 

紅蘭:ん……

大神:……

 

カット切り替え。ラムネを一気飲みした紅蘭。ラムネを持った右腕で口を拭う。腕で顔の下半分が隠れている。メガネは反射していない。眉間にしわを寄せ、厳しい表情。

 

紅蘭:ふう……

紅蘭:……

紅蘭:そんなん……それこそ……

 

カランという、ビー玉が転がる音ともにカット切り替え。ラムネ瓶を差し出す紅蘭。紅蘭の右手には半分残ったラムネ。

 

紅蘭:敗北や……! 科学の!

紅蘭:せやろ? 大神はん?

 

カット切り替え。ラムネ瓶を差し出す紅蘭の右手を、手の甲側から左手でラムネ瓶ごと包み込む大神。ハッとした顔の紅蘭の上目遣いと、大神の真剣な表情。ここは正面から二人を捉えるショットに。

 

紅蘭:……

大神:紅蘭……青木博士は、確かに偉大な、優秀な科学者なんだろうと思う。

大神:だけど……見ている景色は、人それぞれで違うんだ。

紅蘭:……?

大神:……その人だけが見ている、その人だけの景色。

大神:世界をどういう風に見ているのか。

紅蘭:……

大神:例えば世界を悲観したとすれば、その人は世界を憎むことになる。

大神:だがそれは、嫌だと思いながらも、本人が選んでいる道なんだ。

紅蘭:嫌やと思うとるのに?

大神:ああ。人は、見たいと思う景色だけを、見るものだ。

 

フェードでカット切り替え。大神視点。大神から手を離し、軽くうなだれ、下を見る紅蘭。

 

大神:何があったのかはわからないが……青木博士にも、何か、思いがあるんだろうと思う。

大神:彼は彼の、見たい景色を見ているだけなんだ。

紅蘭:……

大神:紅蘭……だから君も、自分で選ぶんだ。

大神:見たいと思う景色を。

紅蘭:……

紅蘭:……ウチが見たい……景色……

 

フェードアウト。

 

子供:おばちゃん! これちょうだい!

 

フェードでカット切り替え。駄菓子売り場で目を輝かせる子供越しに、紅蘭と大神。手前の子供にピントが合っている。

 

子供:おばちゃん! これ! 光武の!

おばちゃん:はいよ、光武のおまけは人気があるねえ。じゃあ……三万円!

子供:えー!? 三銭でしょー?

おばちゃん:あっはっは。まけといてあげる。

 

フッと画面奥の方の大神と紅蘭にピントが変わる。

 

紅蘭:せや……せやな……

紅蘭:機械全部が毛嫌いされとるわけやない……子供らにわかってもらえたら……

 

母親:こら、またそんなもの……!

 

サッとフェードでカット切り替え。差分(大枠は同じ絵で一部のみ違いを出す)。子供が持っていたオシロ製菓の箱を母親らしき手が取り上げる。

 

子供:あ……!

 

カタッという音とともに、ぞんざいに戻されたオシロ製菓のキャラメル。

 

母親:そういうのはダメ。言ったでしょう?

子供:でも……

母親:蒸気機械は危ないものなんだから。これも同じ。ほら、外にいる時はどうするんだった?

子供:どうするって?

母親:蒸気機械には……?

子供:……近づかない……

母親:そう。車とか、大きい蒸気機械には特に気をつけること。珍しがって見に行かない。

子供:んー……

母親:人型蒸気は特にそう。

子供:帝国華撃団は正義の味方だよ……

母親:それでも、危ないのには変わりがないから。そうでしょう?

子供:……

母親:お母さんねえ……心配なの。あなたのことが。ね?

子供:……

母親:ほら、塩昆布はどう? 美味しそう!

おばちゃん:そういえば奥さん、昨日、一丁目の銭湯でも爆発があったんだってね。

母親:そうなんですのよもう……恐ろしいったら。

声:煤に騒音!健康被害!

 

フェードで画像切り替え。通りの向こうに蒸気撤廃デモの集団。クローズアップ。

 

声:煤に騒音!健康被害!蒸気撤廃!蒸気撤廃!……

おばちゃん:ありゃ、また行進だ。参ったねえ。

おばちゃん:こっちの通りに入りづらくなっちゃうから、あれ。

母親:迷惑ですけどねぇ……正直、無理もないと思いますわ。

母親:この前の黄金蒸気の時も、妙なことがたくさんありましたし……

おばちゃん:そうねえ。まあ、便利なもんには、災いがつきもんさね。

おばちゃん:男の人なんかは新しいもん好きだから、蒸気が好きな人が多いけどねえ。

母親:ねえ。困っちゃいますわ。

 

フェードで画像切り替え。紅蘭の横顔。

 

声:煤に騒音!健康被害!蒸気撤廃!蒸気撤廃!……

 

大神:紅蘭……

 

○帝劇外観、夕方から夜へと移行。

 

○玄関

 

アイリス:ただいまー!

かすみ:お帰りなさいアイリス。お疲れ様です、マリアさん。

マリア:ただいま、かすみ。

 

トットッ……と大神が近づいて来る足音。

 

大神:マリア、お帰り。

マリア:隊長も。今お戻りですか?

大神:ああ。……なあ、よかったらこの後、紅蘭と一緒に……

 

紅蘭:せやから……なんでウチにひと言知らせてくれへんかったん?

 

※紅蘭顔ウィンドウのみで、立ち姿なし。声が聞こえて来た、という表現。マリア、動揺した紅蘭の声に、面食らった表情。

 

○玄関ホール

 

由里:だからそれは……!

由里:その……ただ、事前にちょっと、試し刷りしてみただけだったから……

紅蘭:……ちゅうことはつまり……もともと用意しとくつもりやってんや……

由里:最終的にどうするかは、もちろん相談するつもりだったわよ。だけど……

紅蘭:ええわ……

由里:え……?

紅蘭:もうええわ……状況考えたら、しゃあないのはわかっとるし……

由里:紅蘭……!

 

カツカツと足早に去る紅蘭。

 

由里:……

 

トットッ……と大神が近づいて来る足音。

 

大神:紅蘭……

由里:大神さん……

大神:……由里くん、どうしたんだい? 今、紅蘭が……

由里:……

 

パサっという音とともに、由里手持ちの『妖怪道五十三次』のポスターが画面に映る。機械推しでない惹句が書かれた方のデザイン。

 

大神:……なるほど……試し刷りが上がったのか……

由里:ごめん……昨夜は、ゴタゴタしてたから……

由里:業者さんが、いつもと違う場所に持ち込んでくれててさ……

由里:紅蘭が先に気づいて……

大神:……

 

一瞬の間ののち……

 

由里:私が先に話しとけば……

大神:いや、違う……由里くんのせいじゃないよ。

大神:俺が、もっと早く、本人に相談するべきだった。

由里:……ううん、私が大神さんに、黙っててもらうように言っちゃったから……!

大神:……紅蘭を気遣ってのことだ。あの時点では、どうなるかわからなかったしね。

大神:これは、支配人である俺の責任だ。

由里:大神さん……

大神:俺が、話に行くよ。

由里:……

由里:……わかった。任せる。

 

フェードアウト。

 

コンコン!とノックの音と共に、パッとカット表示。紅蘭の扉をノックする大神の右手をアップで表示したカット。

 

大神:紅蘭……

 

フェードでカット切り替え。カメラを引いて、廊下に佇む大神の姿を描写。廊下の奥側から捉えるようなカメラなので、画面左側が扉で、右側が大神。奥には一階へと続く階段が見える。この後のシーンで、部屋の中にいる紅蘭を同じ方向からのカメラで描写し、大神に対して背を向けていることがわかる形にする。紅蘭と大神の心は扉で隔たれてしまった。現在の大神の姿勢としては、扉に左手をつき、右手はノックした後の形のまま、やや顔を近づけて、中の様子を伺っている……というか、紅蘭が反応してくれることを祈っているような様子。

 

大神:……

 

コンコン!と今一度ノックの音。

 

大神:……紅蘭?

 

パッとカット切り替え。部屋の中にいる紅蘭。ベッドに突っ伏して、枕に顔を埋めている。画面左側を向いて、大神には背を向けている姿勢。

 

大神:…… ※紅蘭ではなく、大神の無言。

 

フェードで再び廊下側の大神の様子。先ほどとは姿勢が違っている。少し扉から、体を離し、一旦諦めムード。

 

大神:……紅蘭……

 

さくら:大神さん?

 

フェードでカット切り替え。少しカメラを右側にパンすると、さくらの部屋の前あたりに、さくらが現れていることがわかる。ここでは実際にカメラをパンするのではなく、フェードでフッとカメラ位置を切り替えるとともに、大神の顔の向きを変え、さくらの方を向かせる。

 

しばし表示したのち……

 

フェードアウト。

 

しばしの間ののち……

 

パシュー!という蒸気の音とともに、パッとカット表示。銀座四丁目交差点のネオン看板を描写。ギンザカイカンなどカフェーのネオンを。しばし表示したのち……

 

○テラス

 

カチャ……と扉を開ける音ともに、フェードでカット切り替え。間を空けず、パフ!(クラクション)……バシュー(蒸気音)と、銀座の街の音が聞こえてくる。テラスに出た大神とさくら。二人の様子を横から捉えたカメラ。銀座の街並みが画面左側、大神たちが右側。大神は手すりに手を置き、見るともなく、街を見下ろす。さくらは大神を気遣うような表情で、大神の方を見つめている。

 

大神:格納庫にも舞台裏にもいない。奈落の底にもいなかった。

大神:なら……部屋にいるはずなんだが……

さくら:……きっと、少し経てば、出てきてくれますよ。

大神:……だといいんだけど……

さくら:……また何かあったんですか? その、舞台のことのほかに……

大神:……ああ……

さくら:……

 

フェードで先ほどのネオン画像に切り替え。ジワ横パン(ゆっくりカメラ移動)。よく見ると建物の壁にはデモ参加者が貼ったアジビラがあるのがわかる。

 

大神:俺たちの使命は、蒸気と共にある。

さくら:はい。帝都のみんなの暮らしが、そうですから。

大神:つまり紅蘭みたいな発明家や、技術者は、人々の暮らしを支えている。

大神:……そのはずだ。

さくら:……はず?

大神:……

 

フェードでカット切り替え。街路のアジビラをアップで表示。デモ参加者が貼ったもので『蒸気撤廃!』を呼びかけているもの。ポスターデザイン調のイラスト付きで、蒸気に咳き込む人の絵が描かれている。大正時代のポスターデザインは特徴的なので、上手く再現すること。

 

大神:蒸気そのものが、悪だったら……か……

さくら:?

大神:いや、なんでもない……

さくら:……

さくら:悲しいです。そんな……

さくら:蒸気が悪だなんて、そんな考え……

大神:さくらくん……

 

フェードでカット切り替え。部屋の中にいる紅蘭の様子。暗い部屋の中で、机に向かって、部品をバラした懐中時計に向かっている。机だけ少し灯りが灯っている。カチャカチャと音。また懐中時計を組み上げている。

 

さくら:私たちは、蒸気がある世界で、日々を過ごしてるんです。

さくら:笑って、泣いて……

 

フェードで画像切り替え。紅蘭の手元にクローズアップ。

 

さくら:紅蘭だって、良かれと思っていろいろ……蒸気そのものが悪いわけじゃ……

大神:だけど……例えば、蒸気が身体に合わないこともある……普通は無害だけど……

さくら:それ……

大神:デモで言われてるような健康問題も……

さくら:……さと子さんのことですか?

大神:……

 

フェードでカット切り替え。小説『太正恋歌』の角倉さと子を回想するカット。彩度をグッと低く。まず挨拶のシーン。さくら、大神、泉鏡花、さと子が一堂に会している。しばし表示した後……

 

同じシーンを、カメラを切り替えるように、さと子の表情がよく見えるように、さと子を中心にしたカットに切り替える。他の人物は顔が写っていなくても良い。さと子、かすかに上気した表情をしており、大神に一目惚れしている様子をほんのり感じさせる。しばし表示した後……

 

さくらのメッセージ表示へ。上記二枚のカットはしっかり間をとって見せること。

 

さくら:……確かに、さと子さんのような人にとって……

さくら:……蒸気は……

 

フェードでカット切り替え。別の場面でさと子が咳き込む様子をフェードで切り替えながら、三連続で表示する。

 

軽く咳き込んでかがみこみ(自然と軽く拳を顔というか、喉の前に添えるように持ち上げている。顔をしかめながらも、まだ目は開いている。)→

 

苦しみのあまりその場でしゃがみこんで激しく咳き込み(手で口を覆っている。苦悶のあまり目をぎゅっと閉じている)→

 

手についた血(さと子本人の視点で、自分の手を見ている様子)と三連続。さと子のそばには大神がいる。一枚目では戸惑う大神、二枚目では介抱する大神。

 

大神:先天性蒸気症……数十万人に一人……だったか……

大神:確かに珍しい病気だけど……帝都の人口はもう、五百万人以上になる……

さくら:……

 

フェードでカット切り替え。病院の寝台で眠るさと子。革製のマスクをしている。大正時代にはマスクが流行しているため、ちゃんと当時のものを再現すること。当然だが、病院の様子も大正時代準拠で。画像資料は郊外のサナトリウムが多いだろうが、それを参考に都内の病院に見えるように。

 

大神:蒸気が体質に合わなければ、気管支に炎症を起こし、やがて命を落とす……

さくら:……

大神:蒸気によって苦しんでいる人も……確実にいるんだ……

 

数瞬の間ののち……

 

パッと画像切り替え。くしゃっと丸められ、床に落ちている原稿用紙をアップで捉えたカット。血が滲んでいる。しばし表示したのち……

 

パッと画像切り替え。寝台に据え付けた台の上の原稿用紙を中心に捉えるショット。さと子の右手が万年筆を走らせている。さと子本人の見た目ではなく、さと子に向かい合うような側からのショット。かなり不自然に原稿用紙にガッと寄ったカットにし、さと子の余裕のない心境を暗示する。数瞬表示したのち……

 

パッと画像切り替え。スッとカメラを上げたように、寝台に据え付けた台の上の原稿用紙に向かうさと子の様子。右手には万年筆。しかし激しく咳き込み、左手で口を覆っている。しばし表示したのち……

 

フェードでカット切り替え。さくらの部屋の机。机の上の書き上げられた原稿用紙の束をアップしにしたカット。先ほどの様子とは異なり、静かに万年筆が置かれており、一番上の原稿用紙には題名が。『歌恋正大』と書かれている。

 

さくら:……“大”正恋歌……

大神:そう……さと子ちゃんが、最後の力で書き上げた……

大神:記念公演もした。一夜だけの……

さくら:……

さくら:蒸気の存在しない、もうひとつの“大”正時代……

さくら:さと子さんにとっての、理想の世界……

 

再び、大神とさくら。

 

さくら:でもあれは……悲恋のお話でした……

さくら:戦争と……悲しい恋の……

さくら:さと子さんは……大神さんのこと……

大神:……

 

さくら:……本当に、理想的なだけの世界って、あるんでしょうか……?

大神:……

 

フェードアウト。

 

コンコン!とノックの音とともにパッとカット表示。再び、紅蘭の扉をノックする大神の右手カット。

 

さくら:……紅蘭?

さくら:……少し……お茶でも飲まない?

 

フェードで通常画面に。

 

さくら:私と……それに、大神さんと……

 

一瞬の間ののち……

 

大神:……

さくら:……

 

しばしの間ののち……

 

カチャ……という音ともに、紅蘭を表示。元気なし。

 

紅蘭:……

大神:紅蘭……

 

ビーーーーーー!ビーーーー!といつもの緊急放送。紅蘭、キッとした表情に。

 

かすみ:麹町に百鬼連が出現。花組各員は出撃してください。

 

さくら:こんな時に……

大神:……すまない紅蘭、後で……

紅蘭:レジオトロン……

大神:?

紅蘭:まだ……対策もできてへんのに……!

大神:……

 

フェードアウト。

 

出動シーン。ダストシュート落下&着地からのダッシュ。

 

○アイキャッチ

 

○第6話 戦闘シーンへ

 

☆☆☆戦闘パート開始:文月:麹町一番町交差点☆☆☆

 

永井坂、袖摺坂に挟まれた交差点。高低差大きい。

 

ドーン!ドドーン! と車が立て続けに爆発。

 

カンナ:くそっ! 好き勝手しやがって!

 

水虎:腹に響くねぇ……さすが博士。

水虎:井戸の底にも届かせないとね……祭囃子を。

 

水虎去る。入れ替わりで花組参上!

 

滅法貝(めっぽうかい):揃ったか帝国華撃団。

 

ピリリリリリリ!!と音。危険そうな感じが出る音で。

 

紅蘭:!? ……なんや……どえらい反応がある……!

マリア:位置はわかる? 紅蘭?

紅蘭:……これは……

さくら:……どうしたの?

紅蘭:……あいつの腹ん中や……!

 

ゆるかわ妖怪図「茶釜の妖怪」が出現。

その茶釜に姥が火が焚き付けているとか。

19世紀『百妖図』に登場する妖怪「邪魔」が邪魔する。

 

滅法貝:五分です。

大神:なに……!?

滅法貝:五分。今から五分後に、この茶釜の妖怪は弾け飛びます。

滅法貝:麹町全体が根こそぎ吹き飛ぶ威力です。止められますかな?

アイリス:ばくはつしちゃうの!?

カンナ:なにが五分だ……! 適当言ってんじゃねえぞ!

 

滅法貝、触手を伸ばして機械を茶釜に取り付ける。

 

大神:なんだ……? マリア、見えるか!?

マリア:ええ……

 

ビビ!(デジタルではないので『ピピ!』ではない)……起爆装置のカウントダウンスタート。パタパタとソラリー式でカウントが始まる。以下、自動で戦闘開始まで進行。

 

マリア:秒読みが始まった……!

紅蘭:反応からして……爆発自体は全く嘘やあらへんな……

さくら:爆弾妖怪……!?

織姫:鬼ヤバいでーす!!

滅法貝:あと四分四十秒……

 

戦闘開始!今回は画面の隅にカウントダウン表示が追加!時間内に目的地までたどり着け!

しかし目標は逃げる!その上網の目のような地形で坂の高低差で速度も変わる上に、妖怪『邪魔』が嫌らしく小馬鹿にした動きで邪魔してくるぞ!頑張れ帝国華撃団!(プレイヤーに「うわ!こいつ邪魔!」「超うぜー!」って言わせられたら勝ちだ!ササササーと細かく左右に動いてブロッキングしてくるとか。この敵、邪魔だな~と思って名前を確認したら「邪魔」って書いてるのがイイですね。)

 

以下、戦闘開始直後リアルタイムメッセージ。

 

カンナ:おいおいやべえぞ!

大神:急ぐぞみんな!! 秒読みが終わる前にあいつまで到着するんだ!!

紅蘭:起爆装置はウチが解体する!

大神:みんな、紅蘭をあの茶釜の妖怪のところまで、なんとしても送り届けるんだ!

全員:了解!

 

ちょっとだけ間を空けて……

 

アイリス:アイリスが飛んでけばいい?

紅蘭:あいつをテレポーテーションさして持ってくんのは危険や……!

紅蘭:充填しとるエネルギーがどんな反応するかわからへん……!

紅蘭:かと言って、さすがにアイリスに爆弾解体は頼めへんし……

レニ:それなら僕たちが道を切り開く!

さくら:だから、あとは頼んだわよ! 紅蘭!

紅蘭:うん……やってみる……! これ以上あいつらの好き勝手にはさせへん……!!

 

茶釜に誰かが追いついた!しかしまだカウントダウンは続く!

 

紅蘭:あかん! 周りの妖怪が邪魔や! まだ茶釜にエネルギーがいっとるし……!

大神:みんな、茶釜の周りの妖怪を撃破するぞ!

アイリス:「姥が火(うばがび)」だよ、お兄ちゃん!

大神:「姥が火」を倒す! 全て撃破するんだ!

全員:了解!

大神:ありがとう、アイリス。

アイリス:えへへ。

 

「姥が火」全部撃破!

 

ガシっ!!という音とともに、大神機と、紅蘭以外のその他誰かが、茶釜を左右から取り押さえる。見た目として「固定」してるっぽくなればなんでもOK。その後、ガシャ!と茶釜の妖怪の前に紅蘭機がやってくる。

 

紅蘭:……(カチャカチャ)

織姫:ダイジョブですか、紅蘭?

レニ:織姫、静かに。

紅蘭:……(カチャカチャ)

 

ガチャ!!とひときわ大きな音。

紅蘭:!

 

カウンドダウン停止。

 

紅蘭:ふううぅ……

大神:よし、よくやった紅蘭!

 

お腹を壊したような、ギュウウウウという音で、茶釜の妖怪がブルブル震える。

そしてプシュ~……と空気が抜けるような音で、どんどん小さくなっていき、赤みも無くなっていく。そして、小さく小さくなって、ポンっと消える。

 

◯今回の戦闘ではもうひとつ隠れた攻略法を設定する。

 

マリアのブロックをうまく揃えて、マリアの必殺技で茶釜を攻撃すると、その時点で茶釜が凍って、カウントダウンも止まる。以下、その場合の進行。

 

ガキーン!と茶釜が凍って、どデカい氷塊になる。と同時に、周りに「姥が火」が残っていた場合、ブルブルっと恐れて、チョンチョンと跳ねるように、ヒュー!とコミカルに逃げ出す。

 

カンナ:おお! 凍ったぞ!

紅蘭:そうか、ウチとしたことが……! 凍らしても良かったんや……!

マリア:上手くいく確証はなかったけれど……

織姫:ずいぶん強気のベットですねー……(ベットはネイティヴっぽい発音で。表情は焦り。全員を巻き込んで危険を犯したマリアにチクリ。)

マリア:悪い癖が出たわね……(クールに。)

 

茶釜を凍らした氷塊、バキーンと崩れる。無残にも茶釜消滅。

 

以降は通常の攻略ルートと同じように進行。

 

◯茶釜撃破後

 

滅法貝:ほう……お見事です……! 帝国華撃団。

大神:貴様……! 遊んでいるつもりか!?

滅法貝:滅相もございません。真剣そのものです。

滅法貝:……妖怪たちも感謝していることでしょう。

 

ボウっとマップ上のいくつかのポイントが紫色に怪しく光る。

ポシュポシュポシュっと茶器の妖怪たちが光ったポイントに現れる。

 

滅法貝博士の触手が金色に光る。

 

滅法貝:……

 

触手と同じ金色に光った瓢箪の妖怪が、小物の妖怪たちを吸い込んでいく。

スポ……スポポポポポポ……

 

滅法貝:それでは失礼いたします。

 

ドロロンと退散。

 

カンナ:なんだ……どうするつもりだ……

レニ:今日は滅法貝博士だけだった……さっきの時限爆弾といい……これは……

大神:……!? いかん……!! まさか……!!

 

ギュワン!通信の音。

 

椿:大神司令! 神田に百鬼連が現れました!! それに……!!

由里:たぶんとんでもない数が……!! 通りを埋め尽くしてるって……!!

 

マリア:やられた……!

大神:まずい……!! 急ぐぞ!!

 

フェードアウト。

 

★★第6話:終了★★

 

タータータタータータ~♪ 第7話次回予告!

 

織姫:仕掛けられた罠……敗北に次ぐ敗北……追い詰められていく……花組(ここまでいつもよりわざとらしく訛って。)……あーもーつらたんでーす!このままじゃ鬼ヤバいでーす!! 次回、サクラ大戦~真夏のイルミネイション~ 隠れし神の降臨 太正桜に浪漫の嵐! ほんとバリヤバでーす!

☆☆☆☆☆☆

 

※ゲストキャラクター『青木保治郎』のデザイン資料です。参考までにご覧頂けますと幸いです。

 

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